研究分担者 |
久保川 厚 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (00178039)
佐々木 英治 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (50359220)
田口 文明 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (80435841)
細田 滋毅 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 技術研究主任 (60399582)
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研究概要 |
研究実施計画に従い,今年度は下記の3つの課題に取り組んだ.主な成果は次の通りである. 1.モード水に起因する表層海流形成の実態の解明.最新の海洋気候値資料を解析し,表層海流に伴う密度前線とモード水の関連を調査した.我々がこれまで研究を進めてきた北太平洋だけでなく,南太平洋,北大西洋,インド洋においても,モード水の分布域の赤道側に沿う亜表層前線が存在することを明らかにした.これらの前線に関してはほとんど研究がないため,今後詳細な調査が必要であるが,北太平洋と同様に,モード水が重要な役割を果たしている可能性が高く,表層海流の理解が大きく進展することが期待される. 2.海面水温分布が大気に及ぼす影響の解明.数値シミュレーションと観測資料の解析から,南太平洋に見られる南北幅の狭い東西ジェットが,海面水温偏差の形成を通して,海上風に影響を与え,さらにこの海上風により東西ジェットが強化していることを明らかにした. 3.モード水の変動が北太平洋の表層循環に及ぼす影響の解明.数値シミュレーションと観測資料の解析から,黒潮続流域の冬季混合層の十年規模変動が,モード水の変化を通して,亜熱帯反流の変動を引き起こしていることを明らかにした.同様のモード水励起の海流変動は,地球温暖化シミュレーションにも顕著に見られた.さらにモード水の変動と黒潮再循環やハワイ風下反流の変動との関連を指摘した.これらの結果は,モード水が渦位の輸送を通して海洋循環を変化させることを示しており,モード水の新しい役割を提示している.一方,亜熱帯反流の年々変動については,海面水温前線により励起される局所的な海上風による大気強制が主要因であることを示した.このほか,理想的海洋大循環モデルを用いて亜熱帯反流の季節変動の再現に成功した.現在,季節変動の機構解明に向けて解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の変更および研究を遂行する上での問題点はない.今後,研究分担者間の連携をさらに強化するとともに,個々の分担課題の見直しや再設定を柔軟に行うことにより,研究を効率的に進め,目的の達成を目指す.
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