研究課題
本研究は、太陽活動に伴う高エネルギー粒子の降り込みによって起きるイオン‐分子反応が地球の中層大気中の微量分子に与える影響を、H23年1月に南極昭和基地に設置した地上ミリ波分光計を用いた連続観測に基づき定量的に評価することを目的としている。H26年度は最終年度にあたり、H24・25年度にひきつづき昭和基地でのNO観測を継続し、3年間の一酸化窒素(NO)のスペクトルデータの総合的な解析を行った。線スペクトルの幅・形状からこの観測では主に高度約75kmから105kmの上部中間圏、下部熱圏のNOを検出していると解釈される。H25年までの研究で、昭和基地があるオーロラ帯では、NO強度の変化には極夜の前後3-4ヶ月のタイムスケールで増加する季節変動と数日レベルの短期変動があることが明らかになり、季節変動の時間変化パターンにはNOの光解離が主要な役割を果たしていること、短期変動では23期の太陽活動期の衛星観測で注目された太陽陽子よりも磁気嵐により加速される放射線帯の高エネルギー電子の寄与が大きいことを明らかにした。H26年度の連続観測結果の特徴は、季節変動の振幅が前の2年に比べて1/4程度に大きく減少したことである。しかし、太陽活動度を示す黒点数やF10.4などではH26年度が前の2年に比べて減少している傾向は観測されていなかった。一方POES衛星による電子・陽子の降り込み量のデータを見ると、H26年度は前の2年に比べ、30keV以上の高エネルギー電子の降り込み量が減少している傾向が見られ、特にNOの季節変動が顕著に現れる極夜の前後2ヶ月間の電子フラックス総量が大きく減少していたことがわかった。これらの結果から、昭和基地上空の上部中間圏から下部熱圏のNO量の季節変動振幅は、極夜期に降り込む高エネルギー電子の「その場」反応によって規定されることを観測的に明らかにした。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Geophysical Research Space Physics
巻: 119 ページ: 7745-7761
10.1002/2014JA019881
http://skx1.stelab.nagoya-u.ac.jp/index.html