研究概要 |
ホイッスラーモード波のコーラス放射過程について、電子ハイブリッドコード、電磁粒子コードおよびブラゾフハイブリッドコードの計算機実験結果の解析と比較を通じて、コーラス波動成長のプロセスにおいて線形過程から非線形過程に移行する機構を理論的に解明することに成功した。これまでの理論では、非線形波動成長に必要な共鳴電流はホイッスラー波の電界に平行な成分であり、それを垂直な磁界に平行な成分は無視できる仮定してきたが、非線形成長をトリガーする素過程として磁界に平行な成分が決定的に重要な役割を演じていることが判明した。この理論解析を通じて、非線形成長をトリガーする最適振幅値を導出し、ブラゾフコードおよび電磁粒子コードの結果と比較し、理論の正しさを検証した[Omura and Nunn, 2011]。電子ハイブリッドコートを用いて共鳴粒子密度を様々に変化させてコーラス放射の計算機実験を行い、非線形成長過程から生成されたコーラス放射のスペクトルが線形理論から予測されるスペクトルと本質的に異なる事を示し、周波数変化率が波の飽和振幅によって決定されることを確認し、非線形理論を検証することに成功した[Katoh and Omura, 2011]。コーラス放射によって加速された粒子は磁力線に垂直な速度成分が卓越したリング状の速度分布を作るため、その不安定性による波動励起の計算機実験を行った[Lee et al., 2011]。一方、EMIC波のトリガードエミッションについて、観測および理論で推定される実パラメータを用いて、ハイブリッドコードによる計算機実験を実行し周波数上昇を伴うエミッションを再現することに成功した[Shoji and Omura, 2011]。この計算機実験によってEMIC波によって高エネルギープロトンが非常に大きなピッチ角散乱を受けて、極域に降下してプロトンオーロラを発光させることが判明した。ピッチ角散乱を受けたプロトンは同時にヘリウムモードのEMIC波も励起させることがわかり、観測データにおいても確認することができた[Shoji et al., 2011]。
|