研究概要 |
統合国際海洋掘削計画(IODP)第317次航海で得られたコアの内,陸棚斜面の掘削サイト(U1352)の海底下深度0~550mの試料に普遍的に含まれる底棲有孔虫(Nonionella flemingi)殻の酸素同位体,炭素同位体測定をおこない,その結果に基づき年代モデルの作成を試みた.分析は高知コアセンターの質量分析計を用いて酸素同位体比,炭素同位体比測定を3回に分けておこなった.その結果,1から1.78Ma(深度200~550m)に関しては1万年から5000年間の精度で同位体比変動が求まり,Stage23~63までの海洋酸素同位体ステージを認識した.これにより,この区間でMilankovitchスケールの海水準変動を認識することが出来た.さらに,1Ma以前についても同様のスケールで分析が終了し,年代モデルを作成中である. 一方,陸棚の2つのサイトのコアについて,底棲有孔虫,貝形虫化石の分析が進み,4Maから1Maの間の古水深変化が明らかになりつつある.さらに,1Maより新しい時代についても検討を進めている.今後、古水深変化と陸上削剥時期などを検討する. 粒度分析と堆積相解析の整理は一通り終わり,年代モデルとの総合化に進みつつある.また,U1352コア中の堆積有機物の安定炭素同位体比が有孔虫のδ^<18>0変動と一致していることがわかった.したがって,有機物の安定炭素同位体比が気候変動曲線として使えることで底棲有孔虫が産出しない層準などでも精度高く年代モデルを作成できる.無機化学分析は,分析を開始したところである. また.浮遊性微化石による海洋環境変動の解析については,分担者の須藤の珪藻化石の解析によって,すでにdata reportとして投稿済み.浮遊性有孔虫の解析は陸棚斜面のU1352コア試料について分析をおこなっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究分担者,研究協力者などの努力でコアサンプルの分析が進み,多くのデータが求められた.その解釈も進みつつあり,進行状況としてはおおむね順調といえる.しかし,一部の時代で年代モデルのもとになる酸素同位体比変動が得られていない.これは分析のターゲットとしている底棲有孔虫がほとんど含まれなかったためである.この部分については,有機物の同位体比変動曲線を代わりに用いているが,他の底棲種もしくは浮遊性種の有孔虫などを用いてでクロスチェックする必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
2年目の24年度はデータを集約して,分析間隔の広いところなどを埋める形で年代モデルのさらなる高精度化をはかる.そして,基礎となる年代モデルを論文としてまとめることが最重点である.さらに,この高精度な年代尺度を用いて,海水準変動の周期とその変動幅を古水深変化や堆積環境変遷などのデータと合わせ,具体的な変動像を描くことが,24年度は重要になる.これらの点を,研究分担者,研究協力者との連絡を充分に取って推進する.さらに,学会発表を通して成果を発信し,海外の研究者のデータとも合わせて,結果の総合化・まとめに向けた準備の年とする.すなわち,これまでの成果の発表と総合的解釈の開始が24年度の重点項目となる
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