研究課題/領域番号 |
23340154
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
保柳 康一 信州大学, 理学部, 教授 (30202302)
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研究分担者 |
河潟 俊吾 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (90244219)
長谷川 四郎 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (90142918)
須藤 斎 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80432227)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 海水準変動 / 更新世 / 鮮新世 / シーケンス層序 / 酸素同位体比変動 |
研究概要 |
IODP,第317次航海のニュージーランド南島カンタベリー平野沖の陸棚・斜面掘削で得られた試料の分析によって次のことが明らかになった. 1.斜面サイトにおける底棲有孔虫を用いた酸素同位体比曲線を掘削深度0から550m区間で5,000年から10,000年の精度で描くことが出来た.その結果,海洋酸素同位体ステージ(MIS)63(1.76Ma)までを見出した.また,同時に深度502~510mに180万年から90万年程度の間の地層の欠如(ハイエイタス)が存在しすことがわかった.また,陸棚のU1354についても,酸素同位体比変動曲線を求めた. 2.底棲化石群集解析による古水深解析をおこなった.底棲有孔虫化石を用いた解析では,陸棚のU1354コアでは古水深変化が測定された酸素同位体比に基づく氷期間氷期サイクルと対応している.一方,貝形虫化石でも,周辺の現生貝形虫の分布を参考に、古水深を推定した. 3.堆積物の有機炭素量と安定炭素同位比分析を斜面サイトコア(U1352B)の深度500mまで約2m間隔で224層準、224試料の分析をおこなった.結果はいずれも海洋酸素同位体ステージとよい対応を示しており,氷期で少ない有機物量と低い安定炭素同位体比、間氷期で高い有機物量と高い安定炭素同位体比をとる.このことから,海洋生産性を左右する海洋変動と海水準変動の関係が考察できる. 4.浮遊性微化石解析では,産出・計数した珪藻化石群集を環境指標種群(遠洋性種・沿岸性種・淡水性種および温暖種・寒冷種)ごとに分け,その産出頻度の変動を解析した結果,海洋酸素同位体ステージから分かっている約2.5Maまでの気温変動記録とよく一致していることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1万年精度での底棲有孔虫を用いた酸素同位体分析は終了し,さらに高分解の分析を試みている.また,有孔虫、貝形虫の群集解析なども進み,研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
25年度については,ニュージーランド沖陸棚U1252サイトで採取されているコアから,シーケンス境界付近での高分解での海水準変動解析のために新たな分析用試料をアメリカ合衆国テキサス州カレッジステーションのコア貯蔵センターで採取する.この新たに採取した試料から,昨年までと同様に底棲有孔虫化石を抽出して,その酸素同位体比を測定してコア中のシーケンス境界の位置と海水準の関係を高分解に考察する.なお,サンプリング間隔は境界の上下5mを20cm間隔で採取する.そのことによって,シーケンス境界形成字の海水準変動を2000年の精度で求めることが可能である.なお,陸棚サイトから得られたコア中の有孔虫の酸素同位体比の測定を最上部の回収率の良いところで試みる.おおよそ,1Maぐらいまでは同位体比曲線を描けると考えている.さらに,陸棚サイトの底棲有孔虫と貝形虫化石を用いて古水深変化を求め,海水準変動の振幅について検討する.なお,斜面サイトのコアによる1万年精度の海水準変動曲線とシーケンス境界の関係に関しては,データ取得,解析とも終わっているので論文として投稿する.
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