研究課題/領域番号 |
23340157
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
棚部 一成 東京大学, 総合研究博物館, 研究員 (20108640)
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研究分担者 |
遠藤 一佳 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80251411)
佐々木 猛智 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (70313195)
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (70463908)
伊庭 靖弘 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80610451)
守屋 和佳 金沢大学, 自然システム学系, 研究員 (60447662)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 古生態 / 軟体動物 / 生活史 / 生物地球化学 / 海洋環境変動 / 成長縞編年学 / 微細成長縞 / 白亜紀 |
研究概要 |
1.成長縞編年学に基づく二枚貝類の生活史と海洋環境変動の復元:北海道北部と沖縄県西表島の浅海域から採集した二枚貝類を用いて,成長縞編年学と安定酸素同位体比分析を併用して貝類の殻成長様式を調べ、それと環境因子との関連を比較した。その結果、北海道の冷水温域に生息する二枚貝類3種(ビノスガイ、ウバガイ、エゾタマキガイ)の貝成長は5月から10月に行われ,11月~4月の低水温期には成長を停止して顕著な成長障害輪を形成することや、数10年もの長い寿命を持つ個体がいることがわかった。平均化した年殻成長指数の時系列解析から,3種には北西太平洋中高緯度での水塊温度構造の変動に対応した16-20年周期の変動が認められ、ミレニアムスケールでの海洋環境変動解析の糸口が得られた。一方、年間の海水温変動が小さい西表島産の貝類では、年間を通じて貝殻成長が行われ、貝殻酸素同位体比が示す古水温の変動幅は生息場の年水温変動をよく記録していることがわかった。以上のことから、二枚貝の年毎の貝殻成長期間は生息場の水温の年変動幅に大きく依存することが示唆された。 2.二枚貝殻体の地球化学的分析による環境プロキシの探索:北大西洋産長寿命種アイスランドガイと東京湾産ムラサキイガイの貝殻試料を用いてEPMAとレーザーアブレーションICP質量分析計により元素の空間分布を高精度で分析し、その結果を貝殻結晶構造と比較した。その結果、アイスランドガイでは、SrとSの濃度は年輪と同調して変動し、貝殻微細構造の変化とも調和することが示された。また、ムラサキイガイでは、Mg/Ca, S/Ca比の変動は水温に依存せず、潮汐に対応して周期的な変動を示すことがわかった。 このほか、温室地球期であった白亜紀の貝類を用いた研究を開始するため、米国サウスダコタ州の上部白亜系海成層を調査し、研究に用いる保存のよい軟体動物化石を多数採集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
亜熱帯である沖縄県西表島と冷温帯である北海道オホーツク海沿岸から採集された二枚貝類を用いて成長縞編年学と酸素同位体比解析を併用して調べた結果、両地域の貝類では年間を通じての殻成長様式や個体の寿命に大きな違いが認められ、二枚貝類の年毎の貝殻成長期間は生息場の水温の年変動幅に大きく依存することが示唆された。また、夏期の米国サウスダコタ州の上部白亜系の地質調査により、保存のよい海生軟体動物化石を多数採集することができ、次年度の温室地球時代であった白亜紀の貝類を用いた研究の足がかりが得られた。 以上のことから、今年度の実施計画はおおむね順調に達成されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究によって、高緯度の冷水域と低緯度の高水温域に生息する現生二枚貝類の間では、水温や餌となる植物プランクトンの生物量の季節変動に制約された年間の成長期間、性成熟年齢、寿命などの生活史に大きな違いがあることが示唆された。とくに、北海道北部に生息する長寿命二枚貝種では、年間の殻生長量の変動が北西太平洋中・高緯度の水塊温度構造の変動とよく対応していると考えられる。また、貝殻中の元素組成分布様式は、潮汐周期に依存して変化する微細成長縞付加パターンと調和して変動し、水温のプロキシとしては利用できないことが明らかになった。なお、次年度の研究に向けて、今年夏に北米サウスダコタ州の上部白亜系を調査し、多数の保存のよい軟体動物化石を採集した。今後、続成変質が少ないと判断された保存のよい白亜紀化石試料を用いて成長縞編年学的解析と安定酸素・炭素同位体比分析を行ない、当時の温室地球の海洋環境を復元するとともに、それに対する貝類の生活史の応答様式を明らかにする。さらに、3年間の研究成果に基づき、温室地球と氷室地球における生物-環境相互作用の共通性や相違を明確にして、地球生命史研究の生態学的基礎を構築したい。
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