研究課題/領域番号 |
23340159
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寺崎 英紀 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (50374898)
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研究分担者 |
浦川 啓 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30201958)
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キーワード | 鉄合金 / 弾性波速度 / 密度 / 高圧 / 中心核 / 軽元素 / X線トモグラフィー |
研究概要 |
本研究では、液体鉄合金から構成される地球外核中の軽元素の解明を目指し、高温高圧下で鉄合金メルトの密度と弾性波速度(音速)を同時測定することを目的とする。音速は核の地震波速度と唯一直接比較できる重要な情報であり、密度は核中の軽元素推定の上で必要な物性となる。本研究ではX線トモグラフィー(CT)測定で得られた試料のX線吸収率と長さから密度を求め、音速は試料の超音波伝搬時間から求める。本年度は高圧下における密度測定と音速測定法の確立を並行して行った。 音速測定システムの導入 まず音速測定用に波形発生器・パルス発生器・高分解能オシロスコープから構成される音速速度測定システムを導入し、測定に対応した超硬アンビル及び高圧プレス部品を設計・製作した。測定は常圧下で金属(Cu,WC)の予備的音速測定を行い、各測定条件の最適化(例えば周波数帯域:17-37MHz)により解析に十分な信号強度が得られることを確認した。 放射光X線を用いた高圧下の密度・音速同時測定 次に放射光X線を用いた高圧常温下での密度・音速同時測定を実施した。SPring-8CTビームライン(BL20B2)にて、CT用80トン小型プレスで高圧発生させ測定を行った。試料は4種の鉄合金(Fe,FeS,Fe_3C,FeSi)を用いた。実験は、荷重50MPa(約2GPa相当)まで1-5MPaおきに音速測定及び密度用CT測定を行い、鉄-軽元素試料では各圧力条件下で明瞭な音速の信号を取得することができた。密度については、全試料で各圧力下での試料吸収プロファイル及び長さが測定できた。本研究で新しく導入したシステムによって、高圧下での密度・音速同時測定が実現可能となり、複数の鉄合金試料に対する測定を行うことができた。これは固体試料以外でも密度と音速を初めて同時に測定可能という非常に意義のある結果であり、外核中の軽元素解明に向けた大きな進歩である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では今年度は音速測定システムの導入、アンビル・プレスの改良、アナログ金属の密度・音速測定までを行う計画であったが、音速測定システムの導入が比較的スムーズに行えたため実際は上記の項目に加え4種類の鉄合金固体の密度・音速測定を実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本課題で導入した測定システムを用い、さらに高温を発生させて鉄合金メルト試料についての密度・音速同時測定を実施する。同時にオンサイトでの密度、音速解析を効率的に実行できるプログラムの開発も行う。これにより鉄合金固体およびメルトの密度・音速の温度・圧力依存性が明らかとなる。さらに超硬アンビルの先端サイズを小さくすることにより、発生圧力を伸ばす試みも行う。また複数種類の組成の鉄合金試料を用いることにより、軽元素の与える鉄の密度・音速への効果を明らかにする。
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