研究課題
地球中心核からの限られた情報である地震波データと直接比較を行うために、高温高圧下における鉄合金の密度と弾性波速度を求めることは不可欠である。昨年度に弾性波速度測定システムを導入し、トモグラフィー(CT)による密度測定と組み合わせて、高圧常温下での鉄合金固体の密度と音速の同時測定法を確立した。本年度は高温用の弾性波速度・密度測定セルを開発し、高温高圧下での合金固体および融体の弾性波速度・密度の同時測定を実施した。・高温発生用試料セルの開発高温下での測定を実現するために、試料部構成にグラファイト抵抗ヒーターを入れたセルを開発し、熱電対を用いて電力と温度の関係を複数の圧力条件下で調べた。また加熱時の音速測定用のシグナルケーブルへのノイズ低減のため、直流安定化電源を導入し加熱を行った。また新たにプランジャーポンプから成る油圧自動加圧装置を導入することにより、精密な加圧制御が可能となった。・高温高圧下の合金融体の密度・音速同時測定次に放射光X線を用いた高圧高温下での密度・弾性波速度同時測定を実施した。SPring-8 CTビームライン(BL20B2)にて、CT用80トン小型プレスで高圧発生させ測定を行った。試料にはNi-S合金を用いた。実験は、0.5-1.0 GPaの圧力において1673 Kまでの温度条件で測定を行うことができた。この結果、試料の融解とともに弾性波速度が大きく減少することが明らかとなった。さらに固体と液体で弾性波速度の温度依存性に変化が見られた。密度については融解に伴う大きな密度変化は小さいことがわかり、常圧の密度値からの傾向と良い一致を示した。これより高温高圧下における合金融体の密度と弾性波速度の同時測定が実現され、鉄合金の融点以上の温度条件でも測定できることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、当初の計画通りに、高温用セルを開発し、加熱電源や自動加圧装置の導入も行い高温高圧下での密度・弾性波速度同時測定を実現させた。これを用いて合金固体および融体の測定を高温高圧下で実際に行い、固体と融体に対する物性の温度依存性の傾向を得ることができたため。
今後は、今年度用いたシステムを使用して、数種類の鉄合金試料(Fe-C, Fe-Ni-Si, Fe-Ni, Ni-S)についての密度・弾性波速度同時測定を実施する。これより鉄合金固体および融体の密度・弾性波速度の温度・圧力・組成依存性を明らかにする。特に組成に関しては重点的に調べ、軽元素の与える鉄の密度・弾性波速度への効果および差を徹底的に調べる。得られた結果と地震波データを比較し、核中の軽元素についての評価を行う。また技術的な点に関して、試料からのシグナルを増幅させるためにアンプを導入して信号強度取得の改善を行う。さらにオンサイトでの物性解析システムを確立し、その場で物性値が得られるようにする。
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