研究概要 |
地球中心核の限られた観測値である地震波速度データと直接比較を行い溶融外核中の軽元素に制約を与えるため、高温高圧下における鉄-軽元素合金融体の密度と弾性波速度を求めることは重要である。25年度は、本課題で導入した弾性波速度測定システムとトモグラフィー(CT)測定により確立した密度・音速同時測定法を用いて、合金融体の密度・音速測定を行った。 ・測定系の最適化:密度測定では試料周囲部のX線吸収を低減する必要があるため、本年度は試料セル改良により、周囲由来のノイズを大幅に低減させた。また弾性波速度用にアンプを導入し、解析に十分な試料からの超音波信号強度を得られるようになった ・合金融体の密度・音速同時測定:SPring-8ビームライン(BL20XU, BL20B2)にて、Ni-S, Fe-Ni-C, Fe-Ni-Si融体の密度・弾性波速度同時測定をおこなった。実験は1.0 GPaまでの圧力条件において1973 Kまでの温度条件で測定を行うことができた。この結果、Ni-S融体については密度の増加と共に弾性波速度が単調増加するという重要な結果が得られた。また本研究で得られた密度と弾性波速度データより、これまで誤差の大きかった融体の体積弾性率やその圧力依存性などの弾性定数についても精密に決定することができた。得られた結果は現在論文としてまとめ、国際学術雑誌に投稿中である。 加えて弾性波速度については、BL04B1にてFe-Ni-C, Fe-Ni系融体の測定を6.5GPaまでの圧力条件で行い、これら融体の縦波速度の圧力依存性は比較的緩やかであることがわかった。密度については、BL22XUにてFe-C, Fe-O系融体の測定を6 GPaまでの条件で行い、これら融体の密度の圧力依存性を得ることに成功した。これらの結果より融体の密度・弾性波速度に与える軽元素の影響について議論することが可能となった。
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