研究課題/領域番号 |
23340160
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中村 栄三 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 教授 (80201672)
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研究分担者 |
牧嶋 昭夫 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 教授 (70219301)
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キーワード | マグマダイナミクス / U-Th-Ra / 放射非平衡 / 結晶成長カイネティクス / 表面電離型質量分析計 / マルチコレクションICP質量分析計 / 富士火山 / 斑晶鉱物 |
研究概要 |
本年度は、基盤となる分析・解析技術の確立に重点を置いたうえで、富士火山噴出物の解析を精力的に推進した。研究計画に上げたHR-SIMSによる極微小領域分析、高感度表面電離型質量分析計によるThおよびRa同位体測定技術の高度化、そしてマルチコレクションICP質量分析計による同位体測定技術の高度化は、研究分担者である牧嶋を中心に、スーパーテクニシャンであるT.Chekl博士の協力を得てほぼ達成できたと考えている。今後、Th同位体のマルチコレクションICP質量分析計による分析法の開発に取り組み、目標とする誤差^~5%を切る年代測定法の確立に取り組む。富士火山噴出物については既に採取済みの35試料についてU-Th-Ra放射非平衡年代決定、主要・微量元素測定およびSr、Nd同位体組成の分析を実施している。平成24年度初頭に予定している富士火山での調査・試料採取に向けた基礎データとして活用するとともに、現時点でのデータをもとに富士火山マグマシステムに関するモデリングを進めている。研究を推進するうえで、火山岩斑晶に記録された結晶成長の詳細な記載は不可欠である。本年度、運営交付金にて顕微ラマン分光装置を導入し、既設のカソードルミネッセンス検出器を備えたフィールドエミッション走査電子顕微鏡ならびにフィールドエミッション透過電子顕微鏡と組み合わせ、ミクロン~サブミクロン領域での結晶構造記載、組成変化記載を実現するシステムの構築を進めている。また当初研究計画にはなかったが、K-Ar年代測定の高度化に取り組んでおり、1万年より若い火山噴出物についても^~10%程度の誤差で年代測定が可能となる目途がつきつつある。これはU-Th-Ra非平衡年代のアンカーとなる噴出年代を精密に決定することになり、本研究計画を遂行するうえで非常に大きな進展であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初平成24年度以降に実施予定であった富士火山試料のU-Th-Ra同位体非平衡、全岩の主要元素・微量元素濃度分析、Sr、Nd同位体組成の分析に着手しデータを蓄積している。それにあたり同位体分析技術の高度化は順調に進んでおり、研究計画はおおむね順調に進展している。また研究計画には上げていなかったが、K-Ar年代測定法による噴出年代決定の高度化に大きな進展がみられ、今後の研究がさらに高度化することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、追加採取する富士火山噴出物を含めた地球化学的解析をさらに実施する。さらに平成23年度に運営交付金で導入した顕微ラマン分析装置を既設のフィールドエミッション走査電子顕微鏡およびフィールドエミッション透過電子顕微鏡を用いた斑晶の結晶学的解析を追加し、結晶化実験を実施する前に天然の斑晶鉱物の詳細な記載を行う方向への研究計画の変更を検討している。またスパイクを用いないK-Ar年代測定法をさらに高度化し、数万年より若い噴出年代を精密に決定しU-Th-Ra放射非平衡年代と組み合わせて解析を行う。最終的な目標であるマグマプロセスの時間スケールの見積りを基準としたマグマシステムの時空間発展のモデル化を行うことについて変更はない。
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