研究課題/領域番号 |
23340164
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
荒井 朋子 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 上席研究員 (10413923)
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研究分担者 |
大竹 真紀子 宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (30373442)
二澤 啓司 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (70212230)
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キーワード | 月 / 月地殻 / 月隕石 / かぐや月探査衛星 / 月の起源 / 反射分光特性 / 月の化学組成 |
研究概要 |
本研究では、月隕石の鉱物分析と「かぐや」衛星の可視・近赤外域反射分光データ解析により、月全球地殻の鉱物分布・組成・産状を調べ、マグマオーシャンから結晶化した地殻の鉱物組合せ(斜長石+かんらん石あるいは斜長石+輝石)を明らかにし、マグマオーシャン組成(〓月バルク組成)の推定を目指す。 従来の月探査衛星や地上望遠鏡で得られる反射分光特性は空間分解能が低く、広域(kmスケール)の平均分光特性を観測していたため、粉体にした月試料が解析の標準物質として使われてきた。しかし、「かぐや」の高空間分解能(20m/ピクセル)の反射分光特性が入手できるようになり、月地殻岩盤の結晶質岩石が観測可能となった。かぐやデータから、地殻岩盤の岩石鉱物分布や組成を適切に解析するためには、粉体ではなく、結晶質の(岩石組織を保持した)月岩石試料の二次元反射分光特性を標準物質とする必要がある。 本年度は、月岩石試料の反射分光特性を、二次元かつ高速で測定可能な可搬型分光器Spectral Reflectance Imager (SRIM)の設計・開発・製作を行った。そして、入手済みの砂漠産月隕石試料Dhofar908の同一切断面に対して、SRIMを用いた二次元反射分光特性の分析と、エレクトロンマイクロプローブアナライザを用いた二次元元素組成及び鉱物分布の分析を行った。 今後、同様の手法で他の隕石試料についても分析を進める。このように実験室で測定される、月地殻岩石の二次元反射分光特性と鉱物・化学組成情報は、「かぐや」の反射分光データに基づき月地殻岩石の鉱物分布と組成を導出するために必要不可欠な標準データであり、今年度、来年度に計画している研究を遂行する環境が整ったことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、配分額が最大三割減の可能性を考慮する必要があったため、Spectral Reflectance Imager(SRIM)の開発・作成が予定より遅れた結果、SRIMを使った隕石分析作業が当初の計画より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度開発済みのSRIMを用いて、さらに多くの砂漠産及び南極産月隕石について二次元反射分光特性の分析を行うとともに、同一の切断面について電子線分析装置(EPMA,SEM)を用いて、鉱物組成・化学組成の分析も並行して行い、月地殻岩盤のかぐやデータ解析のための標準データベース構築に努める。また、月惑星着陸探査におけるSRIMの運用模擬のため、野外測定実験も行う予定である。野外測定実験では、RESTECの山本彩研究員に加え、小泉英祐研究員も参加する計画である。 上記研究と並行して、月地殻岩盤が露出する数10km以上の直径を持つクレータの中央丘(Copernicus,Aristarchus,Tychoなど)に着目して、かぐやの反射分光特性データの解析を進め、月地殻の鉱物分布・組成の決定を試みる。
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