月地殻の鉱物分布は月初期のマグマオーシャン組成推定の鍵である。本研究は、月地殻岩石を含む月隕石鉱物分析と月地殻岩盤露出地域の「かぐや」衛星の反射分光データ解析により、月地殻鉱物分布を決定した。結果、月初期地殻は斜長石とかんらん石から成り、月地殻への隕石衝突の熱変成により、かんらん石から二次的に輝石が生じることがわかった。近赤外域で10%程度の輝石共存によりかんらん石の吸収が見えなくなるため、輝石の混在により初期地殻中のかんらん石は衛星分光観測から検知できない。従って現在の月地殻のかんらん石存在度は衛星データで検知されるよりはるかに高く、初期地殻のかんらん石存在度はさらに高いと結論付けた。
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