研究課題/領域番号 |
23340167
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 財団法人 高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
舟越 賢一 財団法人 高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主幹研究員 (30344394)
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研究分担者 |
下埜 勝 龍谷大学, 理工学部, 実験講師 (30319496)
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キーワード | ダイヤモンド複合体 / 高温高圧 / 鉄合金融体 / 粘性 / 密度 / 放射光 / 落球法 |
研究概要 |
本研究は、ダイヤモンド複合体アンビルを利用して、これまで到達できなかった超高温高圧条件(2000℃、40GPa)において、火星中心核組成である鉄合金融体の粘性および密度測定を行い、火星の内部構造や中心核形成過程を解明することを目的とする。本年度は、1.超高速・高分解能検出器を用いたX線落球法実験システムの構築"2.ダイヤモンド複合体アンビルの作成、3.落球マーカーの作成と高温高圧実験用セル開発を重点的に行い、粘性/密度測定を行うための実験環境の整備を中心に行った。 1.超高速.高分解能検出器を用いたX線落球法実験システムの構築 1/1125秒以下で撮影可能な超高速度撮影カメラ装置と動画解析ソフトを組み合わせたシステムを構築し、SPring-8の高温高圧ビームラインに導入した。これにより、X線落球法による粘性/密度測定を行う準備が整った。 2.ダイヤモンド複合体アンビルの作成 反応温度・圧力、真空度、酸素濃度などを制御することによってダイヤモンド複合体を合成し、高温高圧実験に使用する14mm角立方体アンビルを作成した。このアンビルを使った高温高圧発生試験を行った結果、1800℃、13GPaの温度圧力発生に成功した。 3.マーカー球の作成と高温高圧実験用セルの開発 X線落球法実験用に用いるためのマーカー球は、金属球と試料である鉄合金融体との化学反応を防ぐ必要がある。このため、金属球の表面を鉄合金融体と無反応なアルミナでコーティングする技術開発を行い、アルミナをターゲットにしたスパッタリングを行うことで、数ミクロン厚のアルミナ膜コーティングに成功した。また、高温高圧実験の鍵となる実験用セルのヒーター材、試料カプセル材の試験を行った結果、1900℃までの温度発生に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の根幹となる超高速・高分解能検出器システムが完成し、粘性/密度測定を行うための実験環境を整備できた。また高温高圧実験用セル開発は、本研究の最終目標に迫る1900℃までの温度発生に成功した。このほか、ダイヤモンド複合体アンビルについては、14mm角サイズアンビルの作成法がほぼ確立されたこと、またスパッタリングによるアルミナ膜コーティングを使ったマーカー球作成に目処が立ったことから、昨年度に予定していた研究開発をほぼ達成できた。マーカー球が完成していないため、粘性/密度実験を開始することはできなかったが、本研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の方策としては、粘性/密度測定を行うために必要となるダイヤモンド複合体アンビル、高温高圧X線実験用セル、アルミナ膜コーティングマーカー球についての技術開発を優先して行い、作成され次第、順次鉄合金融体の粘性/密度測定を開始していく。特にアルミナ膜コーティングマーカー球の完成は本研究を推進する上で重要な鍵であり、昨年度の研究開発によって作成に目処が立った。本年度はアルミナ膜コーティングマーカー球の試験球を完成させ、まずは低い温度圧力条件から粘性/密度測定を開始する。また、ダイヤモンド複合体アンビルと高温高圧X線実験用セルの開発は継続して行い、最終目標の2000℃、40GPaの温度圧力までのデータ取得を目指す。
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