研究課題/領域番号 |
23340167
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
舟越 賢一 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主幹研究員 (30344394)
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研究分担者 |
下埜 勝 龍谷大学, 理工学部, 実験講師 (30319496)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ダイヤモンド複合体 / 高温高圧 / 粘性 / 密度 / 放射光 / 鉄合金融体 / 落球法 |
研究概要 |
本研究では、ダイヤモンド複合体アンビルと放射光X線を使った高温高圧落球法実験技術を開発し、火星中心核組成である鉄-硫黄融体の粘性および密度測定を行うことを目的とする。今年度は、高温高圧落球法実験を行うための1.ダイヤモンド複合体アンビルの製作、2.落球マーカーの製作技術開発を重点的に行い、3.並行して火星中心核成分の一つである硫黄融体の高温高圧粘性・密度測定を行った。 1.ダイヤモンド複合体アンビルの製作技術開発:より高い温度圧力発生が可能なダイヤモンド複合体アンビルを製作するため、合成条件(ダイヤモンド粒径、反応温度・圧力、真空度)を変えた14mm角立方体形状アンビルを製作し、高圧プレス装置を使って高温高圧発生試験を行った。これにより高温安定性が改善され、1800℃で2倍近い23 GPaまでの高圧発生に成功した。 2.落球マーカーの製作技術開発:金属製マーカーと試料との化学反応を防ぐため、本研究で開発したスパッタリングによるコーティング法によって、数ミクロン厚のアルミナ膜コーティングした2種類の落球マーカー(白金、モリブデン)を製作して実験を行った。しかし、試料が融解する直前にコーティング面の微細な亀裂から鉄融体が浸透して反応してしまうことがわかった。対策として、アルミナ膜のほかにシリカなどを重ねた多層膜コーティングを行い、反応を防御する方法を検討している。 3.硫黄融体の高温高圧粘性・密度測定:SPring-8のBL04B1ビームラインに整備した超高速・高分解能X線CCD検出器システムを使って硫黄融体の高温高圧落球法実験を行った。3種類以上の落球マーカーを使って落下終端速度を求め、ストークス式を使って9 GPaまでの粘性と密度を求めることに成功した。また得られた密度についてバーチ・マーナガン式でフィッティングを行い、初めて硫黄融体の状態方程式を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目的としていたダイヤモンド複合体アンビルの製作技術開発では、さらに高い圧力発生が可能な14mm角サイズアンビルの製作に成功し、技術開発は順調に進んでいる。また、高温高圧X線実験用セルの開発によって、火星中心核成分の一つである硫黄について9 GPaまでの密度の圧力変化を求めることに成功し、状態方程式を初めて決定した。さらに粘性変化を求めた結果、8 GPa付近に急激な変化が起こることを発見し、現在構造変化との因果関係についての解析を進めている。 一方、予定していた鉄-硫黄融体の実験においては、スパッタリング法による落球マーカーのアルミナコーティングでは不十分であることが判明した。対策としてアルミナ膜にさらにシリカ膜を加えた多層膜によるコーティングを検討しているが、製作に目途が立っていないことから当初の研究目的の達成度において、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、引き続きダイヤモンド複合体アンビルの製作、高温高圧X線実験用セルの開発、コーティング落球マーカーの製作についての技術開発を行い、とりわけ実験成功の鍵となる鉄融体の浸透を防御するための落球マーカー製作については、多層膜コーティング技術開発を優先して進める。また落球マーカーの試験を兼ねて、鉄および鉄-硫黄融体の落球法粘性実験を行う。 一方、硫黄融体の粘性測定から8 GPa付近にこれまで報告されていない急激な変化があることがわかった。最初の研究計画で予定していなかったが、この圧力領域においてさらに詳細な粘性測定やX線回折実験を行い、構造変化の詳細を調べる。
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