研究課題/領域番号 |
23340168
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉田 精司 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (80313203)
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研究分担者 |
橘 省吾 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50361564)
関根 康人 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 講師 (60431897)
阿部 豊 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (90192468)
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キーワード | 天体衝突 / 初期地球大気 / 触媒反応 / 衝突蒸気雲 / ユゴニオ曲線 / 高速衝突実験 |
研究概要 |
本研究計画の初年度に挙げた成果の第一は、衝突速度関係データ(Vs-Up式)と比熱の情報のみからユゴニオ曲線上の温度とエントロピーを半解析的に求める連立常微分方程式の導出したことである。この方程式は非常に簡便に積分できる上に、必要な入力パラメーターが数個しかないため、様々な物質に対しての計算ができることが特徴である。次いで、VISARと呼ばれる超高速移動面の速度計測システムを用いて、石英およびカンラン石のVs-Up式のデータを得ることができたこと、ストリークカメラを用いた時間分解スペクトル計測から石英およびカンラン石の比熱データを得たことが大きな成果である。上の常微分方程式系と本データを組み合わせることによって、衝突蒸気雲の熱力学変数(温度、圧力、密度、エントロピー)を30km/sまでの超高速度領域まで容易に計算することが可能となった。衝突蒸気雲の熱力学変数が得られと、初期大気の源となる衝突脱ガス大気の熱平衡分子組成を計算が可能となるため、本研究計画で目指す分子組成計算の基盤を得られたと言える。第三の成果は、太陽系内で唯一地球より高い圧力の窒素大気を持ち、水素の散逸が現在でも起きていることが推定されているタイタンの衝突脱ガス大気実験の結果である。レーザー銃を用いた衝突実験および質量分析計測の結果は、タイタンのN2大気が地殻中に含まれるNH3氷の衝突脱ガスによって形成された可能性が非常に高いことを示していた。この成果は、Nature Geoscience誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高速衝突実験および理論計算面での成果は比較的大きなものを出すことに成功してNature Geoscience誌などへの論文発表に至ることができたが、水蒸気雲中での反応実験やその計測装置開発は具体的な論文化まで至っていない。それらのプラスとマイナスを差し引けば、おおむね当初の計画で想定した達成度と同レベルの達成度であろうと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
レーザーを用いた高速衝突実験および衝突蒸気雲の熱力学計算については、非常に大きな成果が見えてきたので、今後はこちらにさらに注力して、成果の最大化を目指す。具体的には、高強度レーザーの実験データと熱力学計算データを、大気進化モデルに組み入れて、地球、火星、スーパーアースの集積期(低速度衝突が卓越)およびその後の高速度衝突が卓越する時代において、どのような分子組成の大気が生成するか予測することを重点的に研究を進めていく方針とする。
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