研究課題
本研究では、原子炉で試料に中性子を照射しハロゲンを希ガス同位体に変換し質量分析により検出することで、ハロゲンを超高感度で定量する。しかし利用していた京都大学の研究炉KURが、H25年度中に整備工事に入りその後の再稼働認可取得にも時間がかかる見込みとなったため、数個の試料の照射をすませたところで、国内で利用可能な原子炉が存在しなくなった。そこで米国オレゴン州立大学の研究炉OSTRでの照射と、英国マンチェスター大学での希ガス同位体分析を行った(繰り越しによりH26年度に実施)。試料は四国中央部の三波川変成帯・別子地域の変泥質岩、同じく白髪山の蛇紋岩、北西太平洋プレート上の古い海洋地殻である。変泥質岩を真空中で破砕し、試料中の流体包有物について選択的に得られたハロゲン組成は、Sumino et al.(2010, EPSL)で既に報告している同地域のかんらん岩体とほぼ等しく、深海底堆積物中の間隙水に含まれるハロゲンとよく似ていた。一方で同じ試料を加熱溶融して求めた全岩のハロゲン組成は塩素に富み、変質した海洋地殻のもつそれとよく似ていた。この塩素の富化には、海洋底の変質に伴い生成する角閃石が重要な役割を果たしていると考えられる。また蛇紋岩のハロゲン組成は、希ガス抽出法によらず間隙水と完全に一致した。これらのことは、沈み込んだ海洋地殻や堆積物の粒間などに取り込まれていた間隙水由来のハロゲンが、深さ数10 kmほどの沈み込みを経験してもなお流体包有物に残されていること、本来ハロゲンに乏しいかんらん岩が水を得て形成した蛇紋岩は、全岩として間隙水由来のハロゲン組成を強く受け継いでいることを示している。マントルへの沈み込み量を勘案すると、蛇紋岩が間隙水起源のハロゲンの沈み込みに重要な役割を果たしていると考えられる。今後はH25年度に導入した紫外レーザー装置を用いた分析により、微細組織とハロゲン組成の関連を明らかにする予定である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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