研究課題/領域番号 |
23340170
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長尾 敬介 東京大学, 理学系研究科, 教授 (40131619)
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キーワード | 原始太陽系星雲 / 太陽風 / ガスリッチ隕石 / I-Xe年代 / 星雲散逸 |
研究概要 |
太陽系形成過程の研究において、原始太陽系星雲中に多量に存在したガスと塵が消滅した時期の決定は、隕石の母天体である小惑星や惑星などの形成環境解明において最も重要な問題の一つでありながら有効な方法が無かった。我々は過去数年間おこなってきた角礫岩質隕石の研究から、太陽風起源希ガスを多量に含む暗色部分と、ほとんど含まない白色部分を持つある種の隕石のI-Xe年代を測定することにより、その隕石母天体形成領域の晴れ上がり年代を数値として絞り込んで行けることを発見した。本研究は、この手法を多くの隕石に適応して、長年の懸案であった原始太陽系星雲からのガスや塵の散逸時期を、初めて数値として確定することを目的とする。 本年度は、従来まで使っていた希ガス精製ラインを廃棄して、本研究で申請した冷凍機を組み込んだ希ガストラップを含む従来よりも更に高能率・低バックグラウンドを目標とした高性能希ガス精製ラインを製作した。この冷凍機を組み込んだ希ガストラップを用いることにより、トラップを任意の温度に制御して希ガスを吸着・脱着して元素ごとに分離し、質量分析計に導入することが能率的かつ容易におこなえるようになった。これにより、希ガス同位体分析を能率的かつ信頼度良く測定できることが期待される。 この新ラインの性能確認のために、中性子照射によりハロゲンやカルシウム、バリウム、ウランなどから希ガス同位体を生成した種々の岩石試料の分析を行い、文献値や他の研究者が別の方法で測定した値と比較検討した。この結果は、我々の"希ガス化法"が、他の手法に比べて2-3桁低い極めて低濃度のハロゲンを含むマントル物質などに応用が可能であることを示した。本研究目的である、隕石中の微小な異なる岩相を分離分析することが、従来よりも更に能率的に高精度におこなえることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1年度はこれまでの隈石分析で分かっていた、希ガス元素間の分離や希ガス精製プロセスに於ける不十分さを克服することを第1の目的としていた。新たに設計製作した希ガス精製装置の性能は、期待した性能を十分に発揮しており、今後の応用に対応できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
実験設備のうえでは、上述のように研究の実施に十分な体制を整えることが出来た。最大の問題は、昨年の地震・津波の後遺症で実験用原子炉が停止したままであり、再稼働の見通しが明確でないことである。原子炉による試料の中性子照射が進められなければ、目的の年代測定が行えない。本年度の中性子照射の研究課題はすでに採択されているので、震災前に照射して冷却中の試料を分析しながら、実験用原子炉再稼働の動向を見守るつもりである。
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