研究概要 |
これまでに開発されたX線シャドウグラフ法により,高強度レーザーによって圧縮される鉄およびダイヤモンドの融解条件近傍での音速計測を実施した.高強度レーザーによる衝撃圧縮においては,鉄は約250万気圧,ダイヤモンドは約700万気圧で融解すると考えられている.融解によって音速は減少するため,この圧力領域近傍での音速を集中的に計測した.実験結果より,ダイヤモンドでは700万気圧近傍で音速の急激な現象が観測され,これまでの理論予測と一致する部分,一致しない部分が融解近傍の領域で明らかになった.今後の,この原因を詳細に探る予定にしている. 音速計測条件と同じ状態での温度を得る必要があるため,可視光の自発光による温度計測を実施した.得たい温度は10000K以下であり,これまでの輝度温度系ではやや困難であるため,観測波長領域を拡げたブロードバンド輝度温度計測,および分光による輝度温度計測を並行して開発し,実施の実験で安定したデータ取得が可能になった. 流体不安定性観測のためのレーザー照射実験では,ターゲットとなる試料のクオリティ向上が必須である.申請者はこれまでに共同研究者や関連企業との協力のもとに鉄およびダイヤモンドの薄膜ターゲットの開発を行ってきたが,本年度はレーザー核融合ターゲットを主眼としたダイヤモンドの超薄膜化(10ミクロン以下)にも取り組んだ.単結晶ダイヤモンドをウェッジ状に研磨する技術を開発し,レーザー照射実験に導入した.これを使用したターゲットの加速計測,インプリント擾乱計測を実施し,次年度以降の貴重なデータを得ることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度は,初年度として鉄およびダイヤモンドの融解に関する基礎データをまず取得する予定であったが,これ以外にダイヤモンドの加速データ,およびインプリント計測などの次年度以降に計画していた項目が,レーザーのマシンタイムの関係上実施することができた.これは計画全体を早めるとともに,次年度のデータ取得や解析を確実にするために非常に重要である.
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