研究課題/領域番号 |
23340175
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
重森 啓介 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 准教授 (50335395)
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研究分担者 |
近藤 忠 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20252223)
境家 達弘 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60452421)
中井 光男 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (70201663)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 地球核の不純物 / ダイヤモンド / 高圧下での融点 / インプリント / X線シャドウグラフ |
研究概要 |
今年度は,高温・高圧条件下における鉄およびダイヤモンドの物性に関する研究を中心に実施した. 鉄に関しては,昨年度に得られた純鉄の音速計測結果を基に,ケイ素およびニッケルを不純物として添加した試料について,地球内核条件に近い状態での音速計測を実施した.これまでの理論的予測においては,ケイ素を添加によって音速は上昇し,ニッケルでは音速が低下することが示唆されている.配合比を10%程度まで変化させて計測をおこなったところ,理論値とほぼ矛盾の無い結果が得られた. ダイヤモンドに関しては,融点近傍での音速計測を重点的に実施し,融解が開始し完了する700GPa~1100GPaでの計測結果を得た.結果は予想通り線型的な減少を示すことがわかり,これをバーチ則などの経験則と比較するのが今後の課題となる.さらに,ダイヤモンドに関しては回収実験を開始し,融解条件を経験した試料の回収に成功した.現在,データ解析を実施しているところである. また,核融合実験への応用として,ダイヤモンドをレーザー核融合ターゲットのアブレータとして用いることを主眼とした,流体不安定性抑制実験を開始した.まだ初段階での結果であるが,通常のプラスチック(ポリスチレン)と比較して,レーザー照射不均一に起因するインプリントを劇的に抑制できることを初めて確認した. これら高圧力実験のパラメータ領域を広げる目的として,レーザー爆縮プラズマを用いた新しい圧力発生方式の開発も開始した.レーザー爆縮プラズマを用いたギガバール領域の圧力を発生する方式を新たに提案し,原理実証実験を行った.高速点火レーザー核融合実験で使用されるコーン付きシェルターゲットを用い,爆縮の最終過程で得られる高温・高密度のプラズマを圧力発生源として,コーン先端に試料を付した圧縮実験を行い,ギガバールを超える圧力を計測した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの2年間で当初計画していた項目のほぼすべてを達成することが出来た.さらに当初の研究計画の枠を超えた新たな成果も出ている.本年度は鉄およびダイヤモンドの融解に関わる研究を実施した.以下の2点で重要な研究成果が得られた. ①純鉄の音速計測を行うことにより,バーチ則(経験則)による音速の予測が地球内核をはるかに超える超高圧力状態でも成立することを初めて証明し,さらにSiおよびNiの不純物を添加した試料の音速を測定することにより,地球核の組成の制限条件を得ることに成功した.これは地球惑星科学研究において極めて重要な成果である.②ダイヤモンドの超高圧力状態での音速を計測することにより,これまで不明瞭であった1TPa近辺での融解ダイナミクスを直接的に得ることに初めて成功した.さらに,ダイヤモンドをレーザー核融合ターゲットに模したインプリント抑制実験を行い,ダイヤモンドの硬さが生み出す抑制効果を初めて実証した.これらは高圧物性分野だけでなく,レーザー核融合ターゲット設計にも大きな進展をもたらす. これらに加え,次世代の超高圧力発生技術として,レーザー爆縮プラズマを用いたギガバール領域の圧力を発生する方式を新たに提案し,原理実証実験を行った.高速点火レーザー核融合実験で使用されるコーン付きシェルターゲットを用い,爆縮の最終過程で得られる高温・高密度のプラズマを圧力発生源として,コーン先端に試料を付した圧縮実験を行い,ギガバールを超える圧力を計測した.これはレーザーを用いた世界最高の圧力である.この成果は当初の研究計画には無かったものであるが,本研究の進展とともに新たな着想を基に行われたものであり,今後は本研究とリンクさせることにより,これまでに無かった極高圧力領域での研究展開に利用する.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を基に,以下の項目を重点的に進める. ①鉄および鉄化合物の音速計測を引き続き行い,不純物であるSiおよびNiの配合比をより変化させることにより,これまで提案されている地球核の組成モデルの検証を行う.また,地球よりもさらに大きな地球型惑星(スーパーアース)の内部状態を模擬すべく,予備実験を開始する.②米国ローレンスリバモア研において,共同研究者とともにダイヤモンドの超高圧圧縮下におけるX線回折実験を実施する.この実験では,ダイヤモンドの固体-固体相転移に着目し,これまで得られていないポストダイヤモンド相(BC8)の直接観測に挑戦する.③これまでに得られたダイヤモンドアブレーターのインプリント抑制効果の定量評価を行うとともに,ダイヤモンドを球殻ターゲットに応用するための技術開発をすすめる.さらに,ダイヤモンドとプラスチックの中間的な硬さをもつダイヤモンドライクカーボンをターゲット材料候補として,その物性およびインプリント抑制効果を実験的に得る.
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