研究課題
本研究課題は,超高温・超高圧力下における融解現象を軸として,地球核物質である鉄と鉄化合物,レーザー核融合ターゲット材料候補の一つであるダイヤモンドに焦点をあてて実験的研究を行っている.実験手法としては,高強度レーザー照射によって発生する超高温・超高圧状態を創り出し,その条件下での物性パラメータの計測を実施している.これまでの研究において,鉄および鉄化合物に関する実験において,スーパーアースに匹敵する圧力条件までの音速計測を実施し,その音速が古典的経験則である「バーチ則」によく従うことが明らかになった.また,NiやSiなどを混合させた鉄化合物の音速計測も実施し,これら微量軽元素が音速に及ぼす効果があきらかとなり,地球外核を構成する物質の組成に関する新しい知見が得られた.ダイヤモンドの関しては,これまで得られていなかった1500万気圧(1.5 TPa)までの音速計測に成功し,これまでに予測されていた超高圧状態での融解状態に矛盾しない結果となった.さらに核融合ターゲットを模擬した照射非一様によって及ぼされる「インプリント」抑制の実験的研究を行い,弾性体から塑性体に変化するまでの領域でインプリントが大きく抑制されるという新しい概念を構築することができた.
1: 当初の計画以上に進展している
これまでの3年間の研究において,研究計画調書に記載したほぼすべて網羅する項目を遂行することができた.鉄とダイヤモンドの融解現象を軸とした物理的理解は,地球科学的な見地から地球外核の組成に関する新たな制約条件を与えることが可能になり,レーザー核融合の見地からは物質の「硬さ」に着目したターゲット設計という新しい境地を拓くことができた.加えて調書に含まれてない内容の一つとして,レーザー核融合プラズマを用いた極高圧力(1 GBar以上)の発生とその圧縮・回収実験を開発し,本研究の応用領域として新しい見地のベースを構築することが可能となった.なお,研究計画調書で述べた中で,唯一NIF(National Ignition Facility)での実験が行われていないが,これはマシンタイム上の都合であり,2014年または2015年中に実施可能になる見込みである.
2014年度は,これまでの研究成果を踏まえて,鉄に関しては更なるデータ取得(異なる圧力条件,化学組成比,バーチ則の拡大検証)を実施するとともに,これらの結果を論文化し精力的に情報発信を行う予定である.ダイヤモンドに関しては,弾塑性転移が初期インプリントの抑制に大きくかかわることから,これを積極的に用いたレーザー核融合ターゲット(照射パルス波形も含む)の設計を行うほか,追加実験を実施して論文化を行う.さらにこれまでの成果を拡張し,ギガバールに至るまでの極高圧力状態を自由自在に得るための実験基盤技術を開発し,本研究で得られた成果を次の研究フェーズに活かすための準備を行う.
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