研究課題/領域番号 |
23340176
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北野 勝久 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (20379118)
|
キーワード | 大気圧プラズマ / 液中プラズマプロセス / フリーラジカル / 生体高分子 / プラズマバイオ / プラズマ医療 |
研究概要 |
大気圧低温プラズマによる液中反応場を用いたバイオプロセスの研究の基礎過程を研究するために、プラズマ照射時条件の変更が可能な気密構造のプロセスチャンバー実験装置を用いて実験を進めた。一部は連携研究者の研究室に提供して、専門的な分析装置を用いて研究を進めた。液中誘起化学反応は、プラズマにより生成された気相中の活性種が、液中に浸透して、生体高分子などと反応するような基礎過程からなっており、それぞれを並行して研究を進めた。大気イオンを分析するために差動排気付きの質量分析装置を用いて、正イオンと負イオンのそれぞれを測定し、各種放電条件を変更させて測定を行った。液中活性種に関しては、液中での寿命が長い活性酸素であるスーパーオキシドアニオンラジカルに着目して、電子スピン共鳴法によって液中に生成される量の定量を行い、その中で、新しくスーパーオキシドの生成に特化した放電電極構造を発明して研究を進めた。また、気密構造チャンバーを用いて、アミノ酸、脂質、タンパク質に対する液体中での作用を評価するために、質量分析装置や円偏光二色性スペクトル装置などを用いた。それにより、化学構造のみならず、立体構造へ与える影響を評価した。プラズマ周囲のガスを変更したり、液面とプラズマを接触・非接触させたりすることなどの条件により、液中反応場を制御することを試みたが、それぞれ化学修飾が異なってきてくることから、液中へ供給される活性種のスペクトラムが異なっていることがわかり、今後の研究方向性の指針が得られた。特にタンパク質の評価としては、構造変化と共に、生理活性をもたらす酵素活性という観点から評価を行ったところ、1%以下の微少な化学修飾により、立体構造、ならびに酵素活性が70%程度と劇的に変化していることが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
連携研究者の強いサポートが得られたこともあり、平成24、25年度に予定していた研究の一部を平成23年度に前倒しで進める事ができた。メールや電話に加えてミーティングを行うことで密に連絡を取っていることもあり、予定以上の知見が得られており、次年度以降にさらなる新しい研究展開が可能であることが期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、「プラズマバイオプロセスのためのプラズマ液中反応場の構築と理解」であり、反応基素過程を検証するのが目的であるが、研究代表者は、消毒や止血などのプラズマ医療に関する研究を専門の医師と共にin vivoのみならずin vivoで並行して進めており、それらの研究と相互に知見を交換することで、より適切な基礎研究を進められるものだと考えている。特に、気相中ではなく液体中でプラズマと生体高分子の反応を行い、液中で評価を行う研究は世界的にみてもほとんど行われていないが、プラズマの生体への適用を考えた場合重要な研究であり、今後も液体中での評価を主に研究を進めて行く予定である。
|