研究課題/領域番号 |
23340180
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
森 晃 東京都市大学, 工学部, 教授 (60219996)
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研究分担者 |
平田 孝道 東京都市大学, 工学部, 准教授 (80260420)
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キーワード | プラズマ医学 / 重症呼吸障害 / 低酸素性虚血性脳症 / 再生医療 |
研究概要 |
低酸素障害による、重症呼吸障害(肺高血圧症)や虚血性脳症は、成人期にまで影響する重篤な疾患である。特に、低酸素性虚血性脳症は、脳神経細胞死を引き起こし、脳性麻痺の主たる原因であり、この神経細胞死に対する有効な治療法がない。そこで、大気圧プラズマ吸入による呼吸、循環障害及び障害組織再生に適応できる新しい治療法の確立を目指している。23年度は、1:プラズマフロー吸入に適した装置の開発と2:プラズマフローによる生体細胞の活性化とそのメカニズム解明の研究をおこなった。1:生体への使用が前提条件であるプラズマフロー吸入装置開発は、プラズマ生成部と反応部に静電的な電位差が生じないような構造とし侵襲性を無くした。従来型のペンシルプラズマの構造を基に、絶縁円筒の中心にプラズマ生成用電極(直径0.5~1.0mmのタンタル線)を通した同軸構造の大気圧プラズマ生成部を作製した。ガラスキャピラリー(プラズマ発生部の内径:8mm、先端部の内径:1mm)内にタングステン線(直径:1mm)を導入し、外部に筒状グランド電極を設置した同軸状構造とした。そのキャピラリー先端にシリコンチューブを装着し、細胞培養インキュベーター内と、麻酔ガス混入部へプラズマフローを送る装置を作成した。プラズマを発生させるための高電圧は、外部制御型高電圧電源装置を使用した。プラズマ発生条件は、印加電圧:5-9kV、周波数:1-3kHzであり、ヘリウムガス流量:1L/min、プラズマ発生時間:60-90秒である。2:生体細胞への効果を検討するため、マウス線維芽細胞株を含有した培地を使用しCO2インキュベーター内へシリコンチューブによるプラズマフロー流入あり(1回90秒で1日5回)群となし群で比較すると、流入群の場合が培養細胞株に対して細胞増殖を促進することが示唆された。さらに、大動物を対象にした吸入療法の実験では、心電図、血圧などの循環動態への効果判定においてプラズマ発生時のノイズ除去が重要課題であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プラズマフロー吸入装置が完成し、プラズマ生成用電極からシリコンチューブを長くした(約1m)装置により大動物を対象にした実験が可能となった。心電図、血圧などによる循環動態を計測し、プラズマフロー吸入療法の効果判定をするために、ヤギなどの大動物によるデータ収集が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマフロー吸入療法の循環動態の計測による生体への安全性評価では、プラズマ発生時に心電図、血圧計測においてノイズ除去が重要課題であることが明らかとなった。その対策として、ペンシル型のプラズマ発生装置の直径5mmのガラスキャピラリーにシリコンチューブを装着し、そのチューブの長さを約1mmぐらいにしてプラズマ発生部から離すと、ノイズがなくなることが明らかとなった。そのため、今後も大動物実験によるプラズマフロー吸入療法による循環動態を基本とした生体安全性評価を推進する。
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