研究課題/領域番号 |
23340180
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
森 晃 東京都市大学, 工学部, 教授 (60219996)
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研究分担者 |
平田 孝道 東京都市大学, 工学部, 准教授 (80260420)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | プラズマ医学 / 重症呼吸障害 / 低酸素性虚血性脳症 / 再生医療 |
研究概要 |
大気圧プラズマ吸入による呼吸、循環障害及び障害組織再生に適応できる新しい治療法の確立を目指しプラズマフロー吸入のために、ガラスキャピラリー(プラズマ発生部の内径:8 mm、先端部の内径:1 mm)内にタングステン線(直径:1mm)を導入した装置の開発をおこない、マウス線維芽細胞株を含有した培地を使用しCO2 インキュベーター内へのシリコンチューブによるプラズマフロー流入あり(1回90秒で1日5回)群となし群で比較すると、流入群の場合が培養細胞株に対して細胞増殖を促進することを明らかにし、その増殖メカニズムの解明を行った。 マウス線維芽細胞株による培養細胞増殖メカニズム解明のために、細胞増殖には一酸化窒素(NO)などが関連すると考えられた。そのために、培養液中のNO濃度測定が重要と考えた。また、プラズマフロー吸入による血管内皮細胞活性でもNO濃度が関連していると考えられ、いずれもカテーテル型NO濃度測定装置によりノイズが含まれない安定したデータ取得が可能となった。現在培養細胞での実験(5回)また、ヤギ(3例)、ラット(22例)でプラズマフローによりNO濃度の増加を認め細胞活性にNOが関連していることが推測された。今後も症例数を増加し検討する予定である。 さらに、昨年からの課題であった大、小動物を対象にしたプラズマ吸入療法の実験で、心電図、血圧などの循環動態への効果判定においてプラズマ発生時のノイズ除去が重要な問題であった。そこで,ノイズ対策として吸入を行う際に,ガラスキャピラリー吸入装置から直接プラズマフローを吸入するのではなく、ノイズ除去のためにシリコンチューブ(1mm)を介して距離をとることで、ノイズ除去が可能であった。現在ヤギ(3例)、ラット(症例18例)、での実験では、心電図への影響はなく、血圧は、低下する傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガラスキャピラリー(プラズマ発生部の内径:8 mm、先端部の内径:1 mm)内にタングステン線(直径:1mm)を導入したプラズマフロー吸入装置が完成し、プラズマ生成用電極からシリコンチューブを長くした(1m)装置により大及び小動物を対象にした実験が可能となった。心電図、血圧などによる循環動態を計測し、プラズマフロー吸入療法の効果判定をするために、ヤギ、ラットなどの大小動物を用いたノイズのないデータ収集が進んでいる。 さらに、一酸化窒素(NO)は血管内皮細胞より分泌され,血管内皮機能を調節し,血小板凝縮などの抗動脈硬化作用を有するが、血管内皮細胞などの細胞増殖にNOが関連していると考えられている。血中NO濃度をリアルタイムに測定可能なNOセンサが開発され,動物実験に使用されている。血中NO濃度の測定は,循環動態変動を理解する上で重要である。そのために、二極間に適切な電圧を印加して電気分解を行い,電流値を測定し,電流値と分子濃度の相関から分子濃度を得るNOセンサー(インターメディカル社製電気化学測定装置IMEC-601及び一酸化窒素電極INC-020)でノイズのない安定した計測が可能となったために研究の遂行が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマフロー吸入療法時のプラズマ発生時に心電図、血圧計測においてノイズ除去が重要課題であったが、プラズマ発生装置のガラスキャピラリー(直径5mm)にシリコンチューブを装着、そのチューブの長さは1mmで、プラズマ発生部から距離を取り離すと、ノイズが消失した。そのため、今後も大小動物実験によるプラズマフロー吸入療法による循環動態を基本とした生体安全性評価を推進する。 大、小動物を用いた肺、脳障害に対するプラズマ吸入治療の検証実験では、肺高血圧は心機能不全も伴う治療困難な病態である。病態の本質は、肺血管を構築する細胞の筋性化、肥大、増殖、さらには3次元構築の改変(リモデリング)にあると考えられ、肺血管拡張と細胞の炎症や増殖を抑えることを目標にした治療法の開発が重要である。そこで、ヤギ、ラットでの実験を病理学的検討を加え行なう予定である。実験手順は、麻酔による無意識下処置を施す。右頸静脈からのアプローチによる右心房、右心室を経由する右肺動脈にカテーテルを挿入して肺動脈圧を測定する。低酸素負荷(10% 酸素)をかけながら肺高血圧の病態(正常1.5-2倍圧)を作成する。プラズマフロー吸入時の心電図、血圧変動の状況からも吸入時間を検討する。最終的には、解剖後の肺胞、動脈壁及び心臓の組織変化を評価する。 脳障害に対する実験では、ラットを使用し麻酔による無意識下処置を施し日齢3 ラット左総頸動脈を結紮後、6 % 低酸素負荷1 時間により脳梗塞を起こす。24時間後からプラズマ吸入治療を開始する。治 療1 週間後の梗塞面積を未治療群の梗塞面積と比較検討する。脳障害に対して吸入療法の結果が思わしくないときは、プラズマ照射し活性化した神経幹細胞移植を検討する。さらには、神経幹細胞の接着性や遊走性を促進するコンドロイチンA B C などと共に投与した場合と比較しながら多角的な検証を行う。
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