研究課題/領域番号 |
23340185
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
佐々木 明 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (10215709)
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研究分担者 |
西原 功修 国立大学法人大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 特任研究員 (40107131)
砂原 淳 財団法人レーザー技術総合研究所, 研究員 (00370213)
古河 裕之 財団法人レーザー技術総合研究所, 研究員 (70222271)
小池 文博 学校法人北里大学, 医学部, 准教授 (90095505)
西川 亘 国立大学法人岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (80243492)
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キーワード | レーザープラズマ / 放電 / プラズマ原子過程 / 輻射輸送 / シミュレーション / パーコレーション / 相転移 / ストリーマ |
研究概要 |
レーザー照射や放電で生成するプラズマを媒質とする、EUV光源、X線レーザーの特性に影響を与える、プラズマの温度、密度等の不均一性の生成メカニズムを明らかにする研究を行った。ターゲットのアブレーションや、加熱、冷却の際に、プラズマ中の急激な不均一性が生成する現象を、物性理論における相転移現象として理解する可能性と、相転移モデルによって現象を再現する可能性について検討した。 レーザー生成プラズマや放電における相転移現象、その原因として考えられるメカニズム、解析手法、応用可能性などについて議論するため、プラズマコンファレンス2011において「プラズマ相転移:プラズマ・放電の突発性や構造形成を解く新しい概念とその応用」シンポジウムを開催した。レーザー生成プラズマや放電に見られる、いくつかの不均一構造生成の実例についての、プラズマ相転移の概念の適用可能性や、光学薄膜、光学結晶のレーザー光による損傷などの、今後の新たな未知の現象の解析等への展開について議論した。 具体的な理論、シミュレーション研究としては、第1に、プラズマ原子過程の解析を行い、原子番号の大きい(高Z)原子のプラズマ温度、密度に対する価数や輻射損失の評価を行い、高Z原子においては、束縛電子が強く輻射と相互作用するため、放射損失が温度、密度に対して強い非線形性を持つことを示した。また、計算の結果を、他の理論計算や実験結果と比較し、妥当な一致を得ることで、計算の精度を向上させた。 第2に、パーコレーション転移モデルによる、ストリーマ放電の構造形成のシミュレーションを行った。放電媒質中の電離領域の生成と消滅のダイナミクスの考慮と、空間の静電容量を考慮により、放電開始時の特性の詳細な評価を行った。空間の静電容量が充放電することで、電極間をストリーマが短絡する以前から電流が流れることが分かり、また電離領域の割合がある一定値に達するまで、ストリーマの先端の成長、消滅が繰り返される放電の前駆現象や、媒質中で電離領域のクラスタがそれぞれ成長し、接続に至ることで、階段状のステップドリーダーの進展が生じるなど、実験的に観測されている放電の挙動を良く再現するシミュレーションが行えるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラズマ中に相転移現象が存在するかどうかの熱力学的解析においては、当初の予想に反する結果、否定的な専門家の見解もあり、原子過程や輻射、電磁場の効果を含めたさらなる検討が必要となっている。一方、相転移モデルによる、放電の時間、空間特性の解析においては、当初の計画以上に、放電の前駆現象やステップドリーダーの進展を再現する良好な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ中に相転移現象が存在するかどうかの解析と、相転移モデルによるレーザー生成プラズマや放電の時空間分布のシミュレーションの2つの方向での研究を継続して行う。プラズマの原子過程シミュレーションによる輻射特性解析では、実験、他の理論計算との比較を行い、モデルの精度、信頼性の向上を図る。そして、従来手法では計算量が過大で困難な、輻射輸送について、現象を粗視化して適切に取り扱うモデルを新たに考案し、プラズマの熱力学的な特性を解析する。論文発表や、学会での研究発表により、成果の普及を図る。研究分担者、および関連する分野の研究者を交えた研究会を、3ヶ月に一度程度の頻度で開催し、当該研究分野での研究開発状況の調査や、進捗状況の確認を行う。
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