研究概要 |
本研究は、レーザープラズマ加速(高強度レーザーとプラズマの相互作用を利用した電子加速)で得られるフェムト秒電子線パルスとフェムト秒レーザーパルスを相互作用させ、レーザーコンプトン散乱を用いたフェムト秒X線源の実現を目指した研究開発を行うことを目的としている。 今年度はレーザーコンプトン散乱によるフェムト秒X線発生を実証することを試みた。長さ2 mmのヘリウムガスジェットに電子加速を行うレーザーパルス(波長800 nm, エネルギー700 mJ, パルス幅40 fs、以下ではメインパルス)を照射し、エネルギーの揃った準単色電子線を発生する。レーザーコンプトン散乱用のレーザーパルス(波長800 nm, エネルギー140 mJ, パルス幅100 fs、以下ではコライディングパルス)を電子線放射方向に対し20°の角度から電子線に同期衝突させX 線を発生した。蛍光板とCCD カメラを用いた検出系を用い、エネルギー分解された電子像とX線像をシングルショットで同時計測した。X線発生の検出には、高い電荷量を持つ電子線が必要である。閾値(10 pC)を超える電荷量を持つ準単色電子線が発生した場合にのみ、X線が発生したかを判断し、X線発生頻度を評価した。X線発生頻度のメインパルス、コライディングパルス間の遅延時間依存性を調べた。X線が発生する2パルス間の遅延時間は130 fs程度であり、コライディングパルスのパルス幅100 fsと同程度であった。また、2パルス間の遅延時間が130 fs以上では、200ショット以上でX線発生は観測されなかった。このことは、X線パルス幅が 100 fs程度あるいはそれよりも短いことを意味し、フェムト秒X線パルス発生を示唆する結果が得られた。
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