研究課題/領域番号 |
23350001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
内田 努 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (70356575)
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研究分担者 |
郷原 一寿 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (40153746)
永山 昌史 北海道大学, 大学院・工学研究院, 助教 (70374585)
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キーワード | 生物物理化学 / 麻酔 / ニューラルネットワーク / 雷気信号測定 / 分光測定 |
研究概要 |
本研究は、ガスによるニューラルネットワークの信号伝達抑制機構を、ガス印加条件下でのニューロンの分光学的観測や計算機シミュレーションというミクロスコピックなアプローチと、実際に培養ニューラルネットワークにガスを印加した状態での信号測定というメゾスコピックなアプローチとから明らかにすることを目的とする。平成23年度は、以下の項目について実施した。 1.ミクロスコピック観測 (1)細胞および細胞周辺の水溶液の顕微ラマン分光観測:ガス印加状態で細胞を顕微ラマン測定するための高圧セルを設計・製作した。そして実際に細胞を計測する際の技術的課題を抽出し、その解決に努めた。具体的には、培養液中に含まれる成分による蛍光を除去するため、測定時には緩衝溶液を使う必要があることがわかった。また細胞の各部位の測定を行うため、セルの振動を極力抑える工夫を施した。(2)分子動力学シミュレーション:細胞膜とガス分子とがどのような相互作用を及ぼすのかを考察するため、米国コロラド鉱山大学SUM准教授と細胞膜のモデルとしてのリン脂質二重層とキセノン分子との相互作用に関するシミュレーションを開始した。その結果、キセノン分子は脂質二重層(細胞膜)中に良く溶解するということが示唆された。 2.メゾスコピック観測 分散培養された胎児ラット大脳皮質由来のニューロンを電極付きシャーレに約3週間培養し、電気信号の測定を行った。実験に供した試料ではニューロンの自律発火と、ネットワーク形成時に特有な同期バースト信号とが計測されていた。この試料にキセノンガスを0.3MPa印加したところ、同期バースト信号が急激に抑制され、ニューロンの自律発火は影響を受けなかった。このことから、キセノンガスはニューラルネットワークの信号を選択的に抑制し、ニューロンの発火活動自体を抑制するものではないという事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各調査項目とも、平成23年度に着手すべき課題については実施されている。研究が進捗するにつれ、計画段階では予期できなかった事由に遭遇しているが、研究者間で連携をとり、各事由に対処できていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究進捗がおおむね良好であるため、当初の計画通り平成23年度に開始した研究課題を推進しつつ、平成24年度の研究項目に着手する予定である。
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