研究課題/領域番号 |
23350001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
内田 努 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70356575)
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研究分担者 |
郷原 一寿 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40153746)
永山 昌史 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70374585)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生物物理化学 / 麻酔 / ニューラルネットワーク / 電気信号測定 / 分光測定 |
研究概要 |
ガスによるニューラルネットワークの信号伝達抑制機構について、以下の2種類のレベルの観測から明らかにする。平成24年度は、以下の項目について実施した。 1.ミクロスコピック観測:1)分光観測:平成24年度に計画していたμ-MRI装置を用いたイメージング技術開発については、研究協力先であるカナダ国立研究所の都合により年末に急遽中止になってしまった。そのため当初計画を一部変更し、学内共同利用施設にある高精度の顕微ラマン分光装置による観測手法開発に注力することとした。平成23年度作成の高圧セルを用い、細胞膜を模擬したリポソームや培養神経細胞をXe加圧下で測定した。リポソームを用いた実験では、膜構造の変化に伴うスペクトル変化が観測され、相転移温度がXeガス加圧下で低温側にシフトするという現象を確認した。また培養神経細胞のラマン分光測定から、神経細胞やその周囲の水からのスペクトルの測定と同定を行った。2)分子動力学シミュレーション:細胞膜とXe分子との相互作用を考察するため、米国コロラド鉱山大学とシミュレーション研究を引き続き実施した。その結果、脂質二重層(模擬細胞膜)中に溶解するXe量が飽和すると、膜を透過して細胞内まで達することがわかった。 2.メゾスコピック観測:平成23年度に得られた成果を論文として発表した。またラット大脳皮質由来の神経細胞を電極付きシャーレに培養し、培養初期~成熟期のニューラルネットワークに対するXeガスの効果を測定した。神経細胞の自律発火だけがみられた培養初期の試料では、Xeガスの添加時に発火が止まりそのまま活動を停止してしまったので、Xeが神経細胞の自律発火に影響を及ぼすかどうかの確認はできなかった。培養中期~成熟期の試料ではXeガスの添加による挙動に違いがみられなかった。そこで、実験方法の確認を行うとともに、加圧するXe圧力を変化させる実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実績の概要にも示した通り、計画時に予定していた共同研究が急遽中止になってしまったため、μ-MRI装置とhyper-Xeガスを用いたイメージング技術の開発の部分については、予算の執行計画を含め一部計画変更を余儀なくされた。 その他の各調査項目については、平成24年度に着手すべき課題については実施され、論文で成果を発表するなど順次成果も現れてきている。 研究が進捗するにつれ、計画段階では予期できなかった事柄が多く発生しているが、研究者間で連携をとり、当初目的を達成できるよう各事柄に対処できていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
カナダ国立研究機関との共同研究が予測不能な事態により中止になってしまったため、μ-MRI装置とhyper-Xeガスを用いたイメージング研究を取りやめることとした。その代わりに、顕微ラマン分光法による観測研究についてより高精度の装置を利用し、神経細胞の測定とその精度・確度を上げる実験を充実させることとした。 またメゾスコピック観測に関しても、当初予測していたような結果が得られない事態も発生したが、実験方法を工夫することにより当初目的の観測ができるよう修正を行っている。 平成25年度は、これらの事態に対処しながら、全体としての成果をまとめることを目標とする。
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