研究概要 |
水素分子の解離により量子もつれH(2p)原子ペアが生成し、そのダイナミクスは単独のH(2p)原子のそれとは異なると予想される。そのことを実証するために、H(2p)原子ペアが放出するLyman-α光子ペアの角度相関関数と角度―時間相関関数を測定することを目的とした。それらは、量子もつれ原子ペア状態が転写されたものだからである。 ガスセルに水素ガスを満たし、そこに直線偏光した放射光を導入する。入射光軸に直交する面内に二つの光子検出器を置く。各々の光子検出器は、MgF2窓とmicrochannel plateにより構成する。これにより波長115-200nmの光子が検出される。Lyman-α光の波長は121.6 nmであり、本実験で使用するエネルギー30 eV以上の光子をH2が吸収することによる発光のうち、この波長範囲にあるのは、Lyman-α光のみである。 入射光子エネルギー33.66 eVにおいて、Lyman-α光子の角度相関関数をこれまでよりも格段に高い精度で測定した。直線偏光した入射光の偏光ベクトルと光子検出器c, dの軸がなす角をΘc, Θdとすると、a)Θd=Θc+π、b)Θd=-Θc、c)Θd=-Θc+πの三つの配置について角度相関関数を測定した。配置b)とc)における角度相関関数を測定したのは、これが初めてである。理論計算の結果と比較することにより、もつれ原子ペア状態の実体をかなり絞ることができた。またLyman-α光子ペアの角度―時間相関関数も、統計はまだ十分ではないものの測定することができた。
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