本課題の目標は、低温固体中の1個の発光性イオンを光検出し、その核スピンの量子状態を、光の周波数から読み取ることに挑戦することにある。平成24年度までで、温度1.5 Kにおけるプラセオジウムイオン1個に由来する信号をとらえることに成功した。これをうけて、平成25年度は、(1)検出した信号が一個のイオンからの信号であることの確認、(2)投稿論文執筆とその予備的実験、をおこなった。 課題(1)の検出した信号が1個のイオンからの信号であることを確認するため、単一イオンからの信号の偏光依存性を測定した。バルク結晶では、プラセオジウムイオンの結合サイトが120度おきにあるため、プラセオジウムイオンの吸収には偏光依存性がない。一方、単一イオンの信号は、偏光を変えると完全に強度がゼロになる角度がある。これは、検出している双極子は一つであるため、光の偏光と双極子向きが平行になる角度で、吸収がゼロになるからである。さらに、実験に用いた非球面反射型対物レンズの性能を、実験とシミューレーションの両方から評価し、得られた信号強度が単一のプラセオジウムから予想される強度と極めて良い一致をした。これらの実験的な結果から、我々はプラセオジウムの1イオン光検出に成功したと考えている。 課題(2)として、投稿論文の執筆とその予備的実験をおこなった。これらはうまくいき、投稿論文も数ヶ月のうちの投稿できるところまで進行している。
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