研究課題/領域番号 |
23350006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木村 佳文 京都大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (60221925)
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研究分担者 |
佐藤 啓文 京都大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70290905)
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キーワード | イオン液体 / 分子内プロトン移動反応 / 励起波長依存性 / RSIM-SCF / 不均一性 |
研究概要 |
今年度においてはジエチルヒドロキシフラボン(DEAHF)の電子励起状態における分子内プロトン移動速度の励起波長依存性を詳細に検討するためのシステムの構築を行った。設備備品としてオプティカルパラメトリックアンプシステムを購入し、さらに第二高調波発生システムを組み込むことで、300nmから550nmまで励起波長が可変なシステムを構築した。このレーザーシステムの出力を利用して、430nm励起での光カーゲート法による時間分解蛍光測定をおこない、400m励起とほとんど遜色ないレベルで時間分解蛍光測定ができるようにした。また、イオン液体に関しては市販品の購入およびそれらの精製をおこない、イオン液体の種類が系統的に変化できるように準備を整えた。また、光励起プロトン移動反応の励起波長依存性を定常蛍光スペクトル測定によって種々の溶媒で検討を進めた。その結果、通常溶液でもトリアセチンでも依存性が存在することが明らかとなり、必ずしもイオン液体特有の現象ではないことがわかったが、アルキル鎖長の長いホスホニウム系のイオン液体での依存性が顕著であることがわかった。またその他の反応系、環境での励起波長依存性の存在の有無の確認を進めたが、現在のところでは明らかな励起波長依存性を占める系は、本系以外では確認できていない。 理論的手法に関しては、多成分化されたRISM-SCF-SEDD法とfiexible-RISM法を適用することで、[bmim][PF6]中におけるDEAHFのモデル分子であるDMAHFの励起状態プロトン移動反応の自由エネルギー曲面を計算し、吸収・発光エネルギーを再現した。得られた双極子モーメントの変化は時間分解蛍光における+B35ストークスシフトの振る舞いを適切に再現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オプティカルパラメトリックアンプを導入し、それをもちいて光カーゲートシステムを新たに組み上げなおし、350nmから600nmの任意の励起波長で十分なS/Nで時間分解蛍光を測定できるシステムを立ち上げることに成功した。また理論計算においては、励起状態における反応にともなう溶媒和座標の変化について実験結果を説明できるポテンシャル面を予測することができた。こうした点で次年度以降に十分つながる成果が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね当初の予定通り推移しており、次年度は時間分解測定を種々の励起波長でイオン液体の種類を系統的に変化させておこなう予定である。ただし、研究代表者が所属機関を異動したため、実験装置の移設が必要となり、次年度内の適当な時期に研究システムの移設をおこない、実験を再開することになる。そのため、当初の計画よりは若干の遅れが見込まれるが、大きな計画の変更の必要はない。また理論的にも新しいモデルにチャレンジできる十分な素地を確立したので、そのまま検討を進める。
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