H25年度までに,一般的な結合クラスター理論と多参照結合クラスター理論の稼働方程式を自動生成するプログラム開発を行い、四成分相対論を含むF12理論の拡張による重元素に対する高精度電子状態手法の整備も完了した。確率的な観点から擬縮重を伴う任意の励起状態を計算可能なモデル空間量子モンテカルロ法の開発にも成功し,電子理論の適用範囲が著しく広がった。
最終年度であるH26年度は,これまでの研究期間での成果を補完する理論の開発を主に行った。比較的大きな分子の計算には不可欠な二次摂動F12法は共役分子間の分散相互作用を過大評価する事が知られており、制限エネルギー分母による露わに電子相関を考慮した摂動法を提案する事により問題の解決を図った。分子のイオン化状態についても、基底関数極限のイオン化ポテンシャルを直接求めるダイソンF12法の開発を進めた。モデル空間量子モンテカルロ法では、各種二原子分子の励起状態ポテンシャルカーブや遷移金属の計算に適用すると共に、モデル空間内の状態を同時に完全CI解に収束させるエネルギー非依存分割法への拡張と、自動生成による高次結合クラスターハミルトニアンとモンテカルロ法を組み合わせた手法の開発の検討を行った。
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