研究課題/領域番号 |
23350016
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
草間 博之 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (30242100)
|
研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
|
キーワード | アシルシラン / 光異性化 / カルベン / クロスカップリング / イリド / 付加環化 |
研究概要 |
本研究課題では,よりクリーンな,そしてより独創的な有機分子変換手法の実現を目指し,光化学反応を基盤とする高反応性化学種の創製とその反応制御に基づく新しい分子変換反応の開発を目的に研究を展開している。具体的には,これまでほとんど有機合成に利用されたことのないアシルシラン類の光異性化によるカルベン生成に着目し,適切な分子設計の元でこれと各種の求電子剤・求核剤との反応を実現し,独創的な骨格形成手法の開発へと展開することを目的としている。 前年度までの検討により、アシルシランの光異性化で生じるシロキシカルベン種に対し、求電子剤として有機ボロン酸エステルを作用させると、室温・中性条件下で分子間カップリングが効率的に進行することを明らかとしていた。この成果からも分かるとおり、通常、シロキシカルベン種は求核性を示し、求電子剤との反応を起こしやすいことが知られている。しかし本年度の検討の結果、適切な反応系を設計すれば、シロキシカルベン種は求核剤とも十分に反応しうることを見出すことができた。すなわち、アシルシランとピリジン・キノリン類、さらに電子不足アルケンの存在下で光照射を行うと、光異性化で生じたシロキシカルベンがピリジン類と反応してアンモニウムイリド中間体を発生し、これがさらに電子不足アルケンと付加環化反応を起こすことで含窒素多環性化合物を一挙に構築できる。この反応は中性条件下、金属触媒等を用いることなく実施することが可能で、強塩基や金属試剤を必要とした従来のアンモニウムイリド発生法に比べて簡便かつクリーンな手法であると言える。 この成果は、シロキシカルベン種の化学に新たな展開を生み出すものであり、今後様々な分子変換手法の開発に展開可能な意義ある成果と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、これまで有機合成にほとんど利用されたことのないアシルシランのシロキシカルベン種への光異性化プロセスを基盤とした独創的な有機分子変換手法を開発しようとするものであり、おおむね当初の研究目的通りに、シロキシカルベン種と求電子剤、ならびに求核剤との反応、それぞれについて特徴的な分子変換反応の開発に成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度欄に記したとおり、本研究課題は、おおむね当初計画に沿って順調に進展しており、今後もこれまで同様の方法で研究を進めることで、研究目的に沿った沿った方向性の成果を挙げられるものと考えている。
|