研究概要 |
同一炭素上に二つの亜鉛が置換したbis(iodozincio)methane(以下,有機二亜鉛種と記す)は,反応剤自身が二度の反応の可能性を持つだけでなく,ルイス酸である亜鉛原子二個が極めて近い位置に存在しているという特徴を有するので,反応の集積と共に,特殊な反応場を形成することが期待できる。この反応剤を利用して,時空間集積および空間集積を行い,新規な分子変換法を開発することとした。また,有機分子触媒の高度な反応制御を利用する反応を検討することとした。有機分子触媒は活性化における相互作用が,水素結合等の弱い力であり,5員環,6員環環化エーテル化のような活性化エネルギーの低い反応の制御で選択性を発揮すると期待できる。実際ε-ヒドロキシ-α,β-不飽和ケトンに対し,二官能基性有機分子触媒を作用させると,光学活性テトラヒドロフラン環が得られた。反応は,キニジンより得られた触媒が,カルボニル基に対し水素結合を介した活性化を行うと共にアミン部分が水酸基を活性化するという二官能基触媒の特徴を活かして進行するものである。この触媒をγ-ヒドロキシ-α,β-不飽和ケトンとアルデヒドとの混合物に作用させると,ヘミアセタールを介して不斉マイケル付加が起こり,結果として1,3-ジオキソランが光学活性体として得られることを見いだした。この反応も二段階のタンデム反応であるが,それぞれが不斉誘起の過程を含んでいる。当初めざした長鎖アルキル基の効果を充分に発揮することができなかったが,これまでにない新規な分子変換反応を開発することができた。
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