研究課題/領域番号 |
23350017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松原 誠二郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90190496)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 / 不斉合成 / イソシアナート / 有機亜鉛 / 二亜鉛種 |
研究概要 |
我々はシンコナアルカロイド由来のチオウレア触媒をγ-ヒドロキシ-α,β-不飽和ケトンとトシルイソシアナートに作用させると,光学活性2-オキサジリジノンを得る事を見いだした。この変換において,アルコールとイソシアナートを先に加えた後,触媒を加えるか,イソシアナートと触媒を先に加えた後,アルコールを加えるかで生成物のエナンチオ選択性が逆になるという現象を新たに見いだしている。これはイソシアナートと触媒とが先に反応した場合,触媒の構造を変えてしまうからであるが,この変化した触媒は,反応の進行と共に低下するイソシアナートの濃度の影響を受け,可逆的に元の構造に戻る。従って,従来の閉鎖平衡系では,選択性に限界があるものの,同一の基質,触媒,溶媒を用いているにも関わらず,加えて行く順番により生成物の両エナンチオマーが得られる全く新しい現象である。 また,有機二亜鉛種とイソシアナートを作用させると,二亜鉛種の一方の炭素-亜鉛結合がアミド化され,もう一方の炭素-亜鉛結合がエノラートとなって反応することが予想される。実際,二亜鉛種とフェニルイソシアナート が反応するとエノラート等価体が生成し,加水分解後,アミドを与える。この等価体の反応性を調べ,従来困難であった触媒的不斉Reformatsky型反応を触媒量のLープロリノール誘導体を加えて試みたところ,高い収率とエナンチオ過剰率を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初,触媒に炭素鎖を修飾し,有機分子触媒の加速効果を狙い反応に着手した。25年度は,有機分子触媒における実験手順による生成物に不斉逆転というこれまでにない現象を見いだすことができた。また,その反応で用いたイソシアナートを鍵として有機二亜鉛種によりアミドエノラート等価体を新たに創成し,触媒的不斉Reformatsky反応における新展開を見いだす事ができた。 このように,不斉合成への展開が当初目標より予想外に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
有機分子触媒を用いるヘテロ原子環化反応が順調に進展しており,より複雑な分子構造構築に展開していきたい。この際,立体障害として当初の目的である炭素鎖の触媒への導入を検討していく。 最終年度において,複素環の不斉合成反応の手法を確立していく。
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