研究課題/領域番号 |
23350022
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
有機化学
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小嵜 正敏 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10295678)
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キーワード | 光合成モデル / 分子デバイス / ポルフィリン / 光捕集アンテナ / エネルギー移動 / 蛍光スペクトル / デンドリマー / 薗頭カップリング |
研究概要 |
太陽光を高効率で捕集するため、メソ位エチニル基の数が互いに異なる三種類のポルフィリン[テトラフェニルポルフィリン(TP-Por)、ジエチニルポルフィリン(DE-Por)、テトラエチニルポルフィリン(TE-Por)]をアンテナ色素とする光合成モデル型の環状光捕集アンテナを構築した。これらアンテナ色素の励起エネルギーは、TP-Por>DE-Por>TE-Porの順に小さくなるため光捕集アンテナは周辺部から中心に向かって段階的に減少する励起エネルギー勾配を有している。 光捕集アンテナの合成は、これまで我々が開発改良してきた、共役鎖内包型デンドリマー合成法を応用することで達成した。光捕集アンテナはTHF中で400から700nm領域において大きなモル吸光係数(λ_max>56,000M^<-1>cm^<-1>)を持っており、可視光を効率よく吸収することがわかった。THF中で蛍光量子収率を測定した結果より、TP-Por、DE-PorからTE-Porへの励起エネルギー移動効率をそれぞれ91%、94%と算出した。また、蛍光寿命測定の結果から求めた励起エネルギー移動速度定数から、TP-Porからの励起エネルギー移動は51:49の割合でDE-PorとTE-Porへ量子効率96%で起こることがわかった。また、DE-PorからTE-Porへは量子効率98%で励起エネルギー移動が起きることがわかった。これらの結果はTP-PorからTE-Porへのエネルギー移動効率の向上に対してDE-Porを経由するカスケード型エネルギー移動が大きな寄与をすることを示している。 以上の結果は、開発した分子が光合成モデル型の太陽光捕集アンテナとして優れた機能を有していることを示している。このアンテナを応用することで、希薄な太陽光エネルギーを濃縮して、使いやすいエネルギーとすることが可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで3種13個のポルフィリンを分子内に精密配列することに成功している。この分子の合成、性質をまとめて論文発表した。今後の研究展開のかぎとなる分子を完成させたことで、さらなる研究の進展が確実なものとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに完成させた光合成モデル型の光捕集アンテナを基盤として、光捕集機能に加えて電荷分離機能を有する分子を構築する。また、光捕集アンテナを複数集積させて、より大きな受光面積を持つ巨大アンテナの構築を行う。そのために、巨大分子を高効率で集積できる分子構築法の探索を行う。
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