研究課題/領域番号 |
23350023
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
池田 浩 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30211717)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | π電子 / ラジカル / 光反応 / 電子移動反応 / 有機EL / 反応機構 / ラジカルカチオン / 熱ルミネッセンス |
研究概要 |
平成24年度はまず,増感剤を用いたジフェニルメチレンシクロプロパン1の分子間光誘起電子移動反応と電荷再結合によって生ずる励起トリメチレンメタン(TMM)ビラジカル2・・*を発生させ,その発光特性を研究した.しかし,2・・*と光増感剤との副次的な反応が,量子収率測定の障害となることが分かった. そこでつぎに,分子間光誘起電子移動反応と電荷再結合ではなく,分子内光誘起エネルギー移動反応と光照射で,励起TMMビラジカルを発生させることとした.具体的には,三重項増感部としてベンゾフェノン(BP)部を導入した1の分子内光エネルギー移動反応で生じたTMMビラジカル2・・の光励起を行い,励起TMMビラジカル2・・*の光化学および光物理特性を,シングルおよびダブルレーザーフラッシュフォトリシス(LFP)を用いて解析した. 基質1のシングルLFP(hν1,355 nm)による過渡吸収スペクトルを測定すると,2・・に帰属される吸収がλAB = 358 nmに観測された.このことは,励起三重項状態の1から基底三重項状態2・・への開環が非常に速く進行することを示唆している.ダブルLFPにおいては,第一レーザー(hν1,355 nm)照射の2 μs後における第二レーザー励起(hν2,532 nm)により,2・・*のPLがλPL = 580 nm付近に観測され,ローダミンBを基準とした相対法から,その量子収率は0.021と算出された. また,光強度効果の検討から,この光反応が,励起三重項状態の1から励起三重項状態の2・・の反応が起きてから発光する系,即ち「励起状態C-C結合開裂―発光」系であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
励起トリメチレンメタン(TMM)ビラジカル2・・*を生成する方法として,当初は,計画通り,分子間光誘起電子移動反応と電荷再結合を用いたが,上記のように,2・・*と光増感剤との副次的な反応が問題となった.そこで,本研究では,新たな分子を設計し,分子内光誘起エネルギー移動反応と光照射で,励起TMMビラジカルを発生させることに成功し,量子収率測定などの発光特性を解明することに成功した.また,光強度効果の検討から明らかになった「励起状態C-C結合開裂―発光」系は,想定外の結果であり,有機光化学反応機構の分野において重要な知見を与えることになった.従って,上記の達成度であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究で得られた「励起状態C-C結合開裂―発光」系の知見は,学術的な価値が高いので,さらに詳細な検討を加える.また,新たな基質1を設計して同様なダブルレーザー解析を行い,量子収量などの発光特性の解明とともに,「励起状態C-C結合開裂―発光」系の詳細を明らかにする.最終的には,実用的,および学術的な知見をもとに,あらたな「有機ラジカルEL」の開発を行う.詳細の検討項目については,当初の予定に変更は無い.
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