研究概要 |
メチレンシクロプロパン類から発生する励起トリメチレンメタン(TMM)ビラジカル類は,三重項-三重項(T-T)蛍光を発し,大変興味深い.一昨年(平成24年)度はベンゾイル部をもつジフェニルメチレンシクロプロパンの光反応をダブルレーザー(DLFP)法を用いて検討したところ,その励起三重項状態から対応するTMMビラジカルの励起三重項状態が生成し,それがT-T蛍光を発することを見出した.即ち,分子内光エネルギー移動による「励起状態C-C結合開裂-発光」系の発見である. そこで昨年(平成25年)度は,分子間光エネルギー移動による「励起状態C-C結合開裂―発光」系を開拓すべく,ベンゾフェノン(BP)を増感剤とする2,2-ビス(4-ビフェニリル)-1-メチレンシクロプロパン(1)の光エネルギー移動反応をDLFP法で検討した. まず,基質1とBPを含むベンゼン溶液に,第一レーザー光(355 nm)を照射すると,1とBP*の三重項エネルギー移動反応が進行し,TMMビラジカル2・・(波長 = 380 nm)の過渡吸収が観測された.第一レーザー光を照射してから4 ms経過した後に,第二レーザー光(532 nm)を2・・に照射したところ, 三重項励起TMMビラジカル2・・*に帰属される発光が630 nmに観測された.ローダミンBを標準物質に用いて,この発光量子収率を0.029, 発光寿命を130 nsと決定した.ここで興味深いことに,第一レーザー光の照射だけでも630 nmに発光が観測された.発光強度(E)が励起光強度(L)に比例するという事実から,1*から2・・*が直接発生する機構が確認でき,分子間光エネルギー移動でも「励起状態C-C結合開裂―発光」系を確認することができた.
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