研究課題/領域番号 |
23350024
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
櫻井 英博 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 准教授 (00262147)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | バッキーボウル / スマネン / ボウル反転 / コーンアングル / フッ化バッキーボウル / ナノ結晶 / 蛍光増幅 |
研究概要 |
本研究は、バッキーボウルの周縁部に位置選択的に官能基を導入する手法を開発することにより、有機電子材料や、分子スケールデバイス材料など、目的に応じた分子設計を可能とするための道筋をつけることを目的とする。具体的には、官能化C3対称キラルバッキーボウルの自在合成法の確立、お椀型構造に立脚したバッキーボウル独特の物性の評価、C3対称以外の基本対称構造を有するバッキーボウルの合成手法の確立、を3年間の研究計画としている。 24年度においては、合成研究に関しては、C3対称バッキーボウルの合成法はほぼ目処がついたので、C3対称以外のバッキーボウル合成を中心に検討を行った。その結果、23年度から検討しているスマネンを出発とした新たな求電子的官能基導入法をほぼ完成させることができた。加えて、スマネン骨格の歪みを活用した新奇な骨格変換反応の開発に成功し、新たなバッキーボウル骨格「ジメタノベンゾピレン」の合成に成功した。さらにC3対称バッキーボウルについては、スマネンのベンジル位の水素を全てフッ素に変換した「ヘキサフルオロスマネン」の合成にも成功した。 また、物性研究については、バッキーボウルの特徴的動的挙動であるボウル反転挙動について、初めて系統的な考察を行い、スマネン骨格の場合、お椀の底面から周縁のベンジル位で見積もられる「コーンアングル」の大小が最もボウル反転の大小と相関関係があることを明らかにした。また、スマネン、スマネントリオンのそれぞれナノ結晶を作成し、これらが「おにぎり型」コアーシェル構造を形成し、蛍光増幅現象を生じることも見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初掲げた3つの目標の全てにおいて進展が見られたので、バランスよく研究が進行していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度においては、官能化スマネン誘導体を用いた物性研究に顕著な伸展が見られたので、実際の化合物を供給することで、興味深い現象が次々に見つかる可能性がますます高まった。そこで、引き続き、新規誘導体の合成に力を入れるとともに、同時に基本出発物質となるスマネンの大量合成法の確立が、大きな鍵を握ると考えられる。そこで、24年度に雇用予定であった博士研究員が、25年度雇用にずれ込んだこともあり、25年度に改めて大量合成法の検討を行った。その結果、これまで化学量論量の金属試薬を必要としていたプロセスの一部触媒化に成功した。今後、更なるスマネン合成のスケールアップにつなげていく予定である。
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