研究課題/領域番号 |
23350026
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今野 巧 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50201497)
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キーワード | イオン結晶 / 結晶工学 / 自己組織化 / 超分子科学 |
研究概要 |
本研究では、複数の多核錯イオンが多重の超分子相互作用により自己集合化した超分子イオンの構築、およびこの種の超分子イオンの高次集積化によるカチオン-アニオン分離集積型の金属超構造体の開発について検討した。 まず、Au-Ph_2P-PPh_2-Auユニットの両端に塩化物イオンが結合した金(I)錯体をAu^IイオンとPh_2P-PPh_2の反応により合成した。次に、この錯体にD-ペニシラミンを反応させることにより、2分子のD-ペニシラミンがAu-Ph_2P-PPh_2-Auユニットの両端に硫黄原子で結合したキラルな金(I)錯体を合成した。得られた金(I)錯体については、NMRスペクトルにより純度を確認するとともに、各種分析手段により同定を行った。さらに、この錯体の単結晶を合成して、X線解析により、その構造を決定した。 X線解析により、この金(I)錯体には配位チオラト基に加えて非配位のアミノ基とカルボキシル基が存在することが確認され、多座の錯体配位子として機能することが推定された。そこで、含硫アミノ酸部位との結合に有利な金属であるコバルト(II)イオンを用いて、得られた金(I)錯体との反応を空気中で行った。その結果、紫色の反応液が得られ、この溶液に過塩素酸ナトリウムを加えて放置することにより、紫色の固体を単離した。各種分析手段により、得られた錯体は、二分子の金(I)錯体が2つのコバルト(III)イオンを連結したAu^I_4Co^<III>_2六核錯体であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施の概要に記したように、金属超構造体構築の前駆体となり得る金(I)錯体の合成に成功している。また、その構造も単結晶X線解析から明らかにしており、期待した通り、この錯体中には配位チオラト基に加えて非配位のアミノ基とカルボキシル基が存在することが確認された。さらに、この錯体の金属イオンに対する反応性に関する知見も得ており、研究は順調に進展していると考える。、
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今後の研究の推進方策 |
今後は、金(I)錯体とコバルト(II)イオンとの反応から得られる溶液に、サイズ、価数、あるいは幾何構造の異なる種々のアニオン種を添加する。これにより、六核金属錯体が自己集合化した金属超分子を固体として単離する。また、各々の化合物の単結晶を作成してX線構造解析を行い、カチオンーアニオン分離集積型の超構造体が形成されているかどうか調査するとともに、この種の構造体形成の指導原理を追求して行く。
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