ポリマーの解析に広く用いられている熱分解ガスクロマトグラフィー(Py-GC)では、熱分解により生じた分解物の内、GC分離の段階で気相状態として存在できる、分子量、沸点、及び極性などが比較的低い揮発性分解物を分析対象としている。一方、それらが高い難揮発性分解物については、GC分離の段階で気相状態として存在し得ないため、たとえ生成したとしても解析できないという問題があった。こうした難揮発性分解物の解析を可能にするためには、分析部をGCから高速液体クロマトグラフィー(HPLC)へ置き換えることが解決策の一つとして考えられる。 この目的に対して、熱分解装置内での試料の熱分解と生成物の捕集、および捕集した分解物を溶液化してHPLCへ導入するまでの操作をオンラインで行うことのできるインターフェイスを、平成24年度に具体的に設計・試作した。ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを試料として、このインターフェイスにより試料の熱分解、分解物の捕集、溶解を行い、回収された熱分解生成物をマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)などにより解析した結果、GCでは測定できないかなり分子量の大きな分解物が生成・回収されていることを確認できた。 平成25年度は、このインターフェイスを本来の目的であるHPLCシステムに実際に直結し、オンラインPy-HPLCシステムの構築を図った。このシステムを用いて、PBTおよびポリフェニレンエーテル(PPE)のオンラインPy-HPLC測定を行った結果、PBTでは二塩基酸の高極性および高分子量成分を含む複数の分解物のピークが観測され、それらを分離、検出することができた。また、PPEでも高分子量分解物を分離、検出することができた。さらに、LC-MS測定により、MALDI-MSでは分離、分析できなかった異性体も観測することができた。
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