研究概要 |
研究室において高い空間分解を有する共焦点3次元蛍光X線分析装置を開発し、鑑識科学分野に応用することを目的として研究に取り組んだ。高性能のX線検出器、ポリキャピラリーX線レンズを搭載する真空仕様の高空間分解能の3次元蛍光X線分析装置の開発に成功した。7-8種類の元素からなる薄膜標準試料を作成し、空間分解能のエネルギー依存性を評価した。その結果、Au L線の蛍光X線エネルギーにおいて15ミクロンと真空下では世界最小レベルのスペックが実現できたことを実証した。特に軽元素の検出下限について、軽元素を含むガラス標準試料を用いて評価した。その結果、分析領域は数10ミクロン領域に限定されているにも関わらず、これまでの微小部蛍光X線分析法と同等か、それ以上の検出下限値と評価された。Al, Mg, S, Pなどの軽元素の検出に大変有効であることを確認した。この装置はウィーン工科大学の研究グループにより開発された同様の装置とも比較し、特徴づけを行った。開発した装置は、高空間分解能で高感度な装置であると評価できる。 この装置の特徴は非破壊的に試料内部の元素分布情報が得られることである。そこで、いくつかの層状構造を有する鑑識試料(例えば、自動車事故現場に残された自動車塗装片など)に応用し、非破壊的に深さ方向の元素分布プロファイルを得ることに成功するとともに、鉄鋼塗膜表面での腐食挙動のモニタリングにも応用した。すなわち、自動車鋼板などに使用される塗膜鋼板に傷を付与し、その傷から海水中での腐食がどのように進行するか、非破壊的に調べた。その結果、塗膜下での腐食に伴い、P, Znなどの元素の溶解とFe元素の移動の様子が明確に可視化できた。
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