研究概要 |
平成24年度に真空仕様の高空間分解能の3次元蛍光X線分析装置の開発に成功し、平成25年度にはこの装置の特性評価を継続した。この装置では軽元素の分析感度の向上を目的としたので、ロジウムのX線管を搭載し、Rh-La線による蛍光X線の励起を試みた。これは成功したのであるが、Rh-LaとCl-Kaと分光干渉を起こすため、塩素の分析が困難となる。いくつかのフィルターを併用することにより、分析領域は数10ミクロン領域に限定されているにも関わらず、軽元素の検出に大変有効であることを確認した。 この装置の特徴は非破壊的に試料内部の元素分布情報が得られることである。そこで、いくつかの層状構造を有する鑑識試料に応用してきた。特に、自動車塗装片の詳細解析に加え、自動車のタイヤに使われるアルミホイールの表面層の非破壊分析について、高知大学の西脇先生とともに計測を行った。このアルミホイールは製造メーカーにより含まれる元素や層構造が異なることから法科学においても有功な非破壊的分析方法となることが分かった。 この他に、本装置を用いて。鉄鋼塗膜表面での腐食挙動のモニタリングにも応用した。すなわち、自動車鋼板などに使用される塗膜鋼板に傷を付与し、その傷から海水中での腐食がどのように進行するか、非破壊的に調べた。その結果、塗膜下での腐食に伴い、P, Znなどの元素の溶解と塗膜下膨れの進行の様子が明確に可視化できた。 さらに、本手法をリチウム2次電池の電極材料の分析に応用した。充放電を繰り返した電池から電極を取り出し、非破壊的に元素分布解析を行った。その結果、Li-Ni-Mn-O正極材料ではNiやMnの濃化部位が確認され、カーボンの負極材料からはP, Mn, Niなどが局所的に付着している様子が確認された。 以上のように、真空仕様の3次元蛍光X線分析装置の開発、評価を終え、いくつかの試料に応用し、その有用性を実証することができた。
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