研究概要 |
高分子の極表面の分析を行うために報告者らは、自ら開発した表面わずか数十nm程度の電子スペクトルの情報が取得可能な全反射減衰全反射吸収-遠紫外(ATR-FUV)分光器を用い、ポリエチレンのATR-FUVスペクトル測定(145-250 nm)を行った。密度の異なる18種類のポリエチレン(high-density polyethylenes (HDPEs), linear low-density polyethylenes (LLDPEs), low-density polyethylenes (LDPEs))のATRスペクトルと透過スペクトルの比較、液体、固体アルカンとの比較、異なるサンプル作製法での比較から、電子状態と表面状態の変化の相関を得た。また、量子化学計算を用いてスペクトル変化がどのような物性や構造変化によるものか明らかにし、新しい分光分析法における基礎を確立した。HDPEs と LDPEs は155 nm 近傍に強いバンドを与えた。このバンドはHOMO から Rydberg 3p への遷移とHOMO-1から Rydberg 3s への遷移の重なりと帰属した。 LLDPEs とLDPEs は180-200 nmの領域にもう一本のバンドを与えた。 LLDPEs と LDPEsの透過スペクトルは185 nm 近傍にバンドを与えた。このバンドの強度は結晶化度の増大とともに減少した。従ってこのバンドはアモルファス由来であると示唆された。185 nmバンドの強度をATR と透過スペクトルで比較した。その結果これらのポリエチレンの表面は他のどの部分よりアモルファス部分が多いことが分かった。
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