研究課題/領域番号 |
23350038
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
丹羽 修 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 副研究部門長 (70392644)
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研究分担者 |
加藤 大 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (80533190)
田中 睦生 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (70344108)
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キーワード | 電気化学 / スクリーニング / カーボン薄膜 / ナノ構造体 / 酵素 / UV/オゾンプロセス |
研究概要 |
薬物代謝阻害を簡便に電気化学的にスクリーニングする手法の基盤を確立することを目的とし、代謝に関与する酵素(チトクロームp450)の薬物阻害を電流値の変化で検出する。酵素と電極の直接電子移動は、酵素の活性中心と電極の距離が離れているため、通常困難である。最近では、カーボンナノチューブや金属ナノ微粒子を用いて固定化した酵素の活性中心と電極間の距離を近づけて電子移動を向上させる試みがなされている。本研究では、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ法で形成したカーボン薄膜が、ナノレベルで、sp2結合とsp3結合の量が異なる領域を有し、それに大気中にUV照射を行うと、発生するオゾンにより、sp2結合を多く含む領域がより速くエッチングされることにより、バラの棘状のナノ構造が形成できることを見出したことから、この構造上に酵素を固定化し、高い直接電子移動を実現することを試みた。ナノ構造の形成を他の幾つかのカーボン材料(グラッシーカーボン:GC、ボロンドープダイヤモンド膜、ポリマー等の薄膜を熱分解して形成したカーボン膜、ダイヤモンドライクカーポン:DLC膜など)にUV照射したところ、GCや熱分解カーボン膜などsp2結合を多く含む膜では、表面がよりラフになりエッチングが起こっていることが分かったが、ECRカーボン膜のような、ナノレベルの表面構造を得ることができなかった。一方、ボロンドープダイヤモンドは、全く表面構造が変化せず、sp3結合は、UV/オゾンプロセスで殆どエッチングされないことが分かり、ECRスパッタカーボン膜のナノレベルでのsp2結合(sp3結合)の分布が、ナノ構造体形成に大きく寄与することが確認された。チトクロームp450は、市販されているものは、不純物を含み、最初に原理確認を行う酵素としては適していないため、電極上での直接電子移動が。比較的良く検討されているピリルビン酸化酵素(BOD)とチトクロームC等で形成したナノ構造体の効果を調べた。その結果、UV/オゾン処理により形成したナノ構造体電極上では、BODの酸素還元電流が、30倍以上も向上することが分かった。しかしながら、ナノ構造体をアルゴンプラズマ処理し、ナノ構造体を保持したまま、疎水化すると還元電流は大幅に低下し、ナノ構造体と表面の親水性がBODの電極との直接電子移動に大きく効いていることが分かった。次に、チトクロームCで同様な実験を行ったところ、チトクロームCでは、疎水性のナノ構造体の方が大きな電流が観測され、電極の親疎水性の影響は酵素により異なるが、いずれにしてもナノ構造体が高効率の直接電子移動に大きく寄与していることが分かった。一方、酵素を固
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ構造体形成と酵素2種類での高効率の電子移動の確認には、成功し予定道理に進行していると判断した。一方、酵素修飾電極の酵素剥離による安定性の課題等もあり、当初の計画以上に進捗させることは、できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後に向けた課題として、酵素の固定化をより安定にするための構造の最適化、或いは、単分子膜等の相互作用を向上させる修飾層の検討などが必要である。また、チトクロームP450を今後使っていく必要があるが、市販の酵素が純度が低いため、精製を行う必要が出てきた。これについては、生化学に詳しい研究員(同組織内)に2年目より研究分担者に加わって頂き、検討を行う予定である。
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