研究課題/領域番号 |
23350038
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
丹羽 修 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 総括研究主幹 (70392644)
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研究分担者 |
田中 睦生 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, グループリーダー (70344108)
加藤 大 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (80533190)
吉岡 恭子 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (50358321)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電気化学 / スクリーニング / カーボン薄膜 / ナノ構造体 / 酵素 / UVオゾン処理 |
研究概要 |
薬物代謝阻害を簡便に電気化学的にスクリーニングする手法の基盤を確立することをため、代謝に関与する酵素(チトクロームp450)の薬物阻害を電流値の変化で検出することを目的とする。当初は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ法で形成したカーボン薄膜が、ナノレベルで、sp2結合とsp3結合の量が異なる領域を有し、それに大気中にUV照射を行うと、発生するオゾンにより、sp2結合を多く含む領域がより速くエッチングされることにより、バラの棘状のナノ構造が形成できることを見出したことから、この構造上に酵素を固定化し、高い直接電子移動を実現することを試みた。この構造体に酵素を固定化すると、サイズの比較的小さなビリルビン酸化酵素やチトクロームCなどでは、ナノ構造電極と酵素の間に明確な観測されたが、チトクロームP450は、よりサイズが大きく、直接電子移動に伴う電流が小さかった。そこで、カーボンナノファイバーの様なより大きなナノ空間を有する材料をカーボン薄膜電極に酵素共に修飾したところ、チトクロームP450の電極との直接電子移動に伴う酸素還元電流が明瞭に観察できた。また、テストステロンなどの薬物代謝に伴う電流増加も観測され、電気化学的な薬剤代謝センサの原理確認を行うことができた。他のカーボン材料として、カーボンブラックやカーボンナノチューブとP450を修飾した電極で同様の測定を行ったところ、大きな酸素還元電流は観測できなかった。一方、別途酸化物系の薄膜電極についても検討を行った。カーボンと同様にスパッタ法によりインジウムー錫酸化物(ITO)薄膜電極を形成した。薄膜はアモルファスのものと微結晶からなる2種類を形成したところ、後者でP450と極めて高効率に電子移動に伴う酸素還元電流が観測され、薬剤代謝による電流の増加も確認できた。酸化物電極の効果について今後より詳細に検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ナノ構造体電極として、新たにカーボンナノファイバー修飾薄膜電極や酸化物電極を検討したところ、前者はUVオゾン処理で酵素(ビリルビン酸化酵素等)との高効率の電子移動を観測、後者は未処理でも高効率の電子移動が達成できた。スクリーニング用センサに使用するチトクロームP450酵素を修飾した上記電極でも同様に薬物代謝に伴う電流変化が明瞭に観測された。以上のように目的酵素に対し、最適な電極材料やナノ構造のを把握できたことで、計画以上の進展が達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後に向けた課題として、チトクロームP450をマイクロ流路中に集積化した電極上に固定化する必要がある。昨年より、酵素など生体材料に詳しい研究員(吉岡)に加わってもらうことで、酵素活性を保持したままで、P450の未精製の試料でも安定に直接電子移動に伴う電流を観測できた。この方法をマイクロ流路中に配置した電極にも応用することで、微小な電極上で安定に酵素の固定化を行っていく。また、流路形成に熱など酵素の変性が起こるような過激な工程をさけ、常温で酸塩基などを使用しない工程を用いる予定である。
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