研究課題/領域番号 |
23350041
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 正浩 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20174279)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機化学 / 合成化学 |
研究概要 |
含窒素環状化合物は医薬品や有機電子材料など、多くの有用物質の母骨格をなす重要な化合物群であり、効率的な合成手法の開発が求められている。本研究課題では遷移金属触媒を用いて、含窒素環状化合物を合成する新手法の開発を目的に検討を行っている。本年度はフェナントリジンのホウ素錯体を合成する手法、ニッケル触媒による1,3-ジエンと二分子のイソシアナートの[2+2+2]付加環化反応や2-ヨードベンズアミドとアルキンの付加環化反応、トリアゾールの脱窒素を経る付加環化反応を開発した。以下にフェナントリジンのホウ素錯体を合成する手法について述べる。 ベンズアニリドを、触媒量の酢酸パラジウムの存在下、酸素雰囲気のもと、安息香酸を溶媒として120℃で加熱撹拌したところ、脱水素環化反応が進行してフェナントリジノンが生成した。このフェナントリジノンに無水トリフルオロスルホン酸とピリジンを作用させ、トリフラートとした。このトリフラートとエチニル(トリフェニル)ボラートをパラジウムとDPEPhosからなる触媒の存在下で反応させたところ、両者のカップリング反応が進行してフェナントリジンを含むπ共役系のホウ素錯体が生成した。この化合物は、カラムクロマトグラフィーで単離できるほど安定であった。この化合物は高い平面性を有しているため、高い熱的安定性を有していることが期待されたが、ガラス転移温度は観測されなかった。また、サイクリックボルタンメトリー測定の結果、可逆的な還元波が観測され、還元的に安定であった。また、その還元電位は-1.7Vほどであり、比較的高い電子受容性を有していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の計画のとおり、ベンズアニリドの酸化的環化反応を利用した含窒素π共役系のホウ素錯体を合成する手法を開発した。加えて、ニッケル触媒による1,3-ジエンと二分子のイソシアナートの[2+2+2]付加環化反応や2-ヨードベンズアミドとアルキンの付加環化反応、トリアゾールの脱窒素を経る付加環化反応を開発することができた。これらを踏まえて「②おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
持続可能な科学技術の確立に向けて、効率的な合成手法の開発が求められている。今後もこれまでに得られた知見をさらに押し進めることで、含窒素化合物を合成する新反応をデザインし、実験を実施する。さらには、開発した反応を活用した有用物質や新規物質の効率的な合成戦略を提案、実現していくことで、反応の有用性を示すとともに、物質合成の新基盤を開拓していく計画である。また、以上のような合理的戦略に基づいて新技術を着実に開発する一方で、合成実験を実施するなかで、予想していた反応や既存の反応のみならず、まったく予想だにしなかった説明のできない結果が得られることもある。これらを見逃さず、その新規性、有用性について随時検証していくことで、研究の新展開の可能性を探る計画である。
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