研究概要 |
1. 昨年開発した触媒中間体モデル([PdAr(μ-OAc)(PPh3)]n)を用いて種々のヘテロアレーン類の競争反応を行い,直接的アリール化反応に対する反応性比を求めた:ベンゾチアゾール(0.39)<2-メチルチオフェン(1)<ベンゾチオフェン(3.9)<5-メチル-2,2'-ビチオフェン(8.2)<2-フェニルベンゾチアゾール(35)<ペンタフルオロベンゼン(95). 2. これまで,ヘテロアレーン類の反応性は,主にC-H結合切断過程に関するDFT計算をもとに議論されてきた.一方,本研究では,反応速度論とDFT計算を組み合わせることにより,C-H結合切断過程のみならず,基質配位と還元的脱離も含めた複合的な因子によりヘテロアレーン類の反応性が制御されていることを明らかにした.たとえば,2-メチルチオフェンの反応の律速段階は還元的脱離であり,速度論的同位体効果は観測されなかった(kH/kD = 1.0).一方,ベンゾチアゾールの反応の律速段階はC-H結合切断過程であるが(kH/kD = 3.3-5.5),ベンゾチアゾールが窒素原子によってパラジウムに強く配位するためC-H結合切断の前駆錯体である配位錯体が安定化し,これにより反応速度が顕著に低下することが分かった. 3. AA/BB型モノマーの直接的アリール化重合に高活性なパラジウム触媒系を開発した.THF中,炭酸セシウムと酢酸(あるいはピバル酸)の存在下,Pd2(dba)3(0.5 mol%)とP(o-MeOC6H4)3(2 mol%)を触媒前駆体に用いて,2,7-ジブロモ-9,9'-ジオクチルフルオレンと1,2,4,5-テトラフルオロベンゼンを反応させ,極めて分子量の高い交互共重合体(Mn = 347700)が合成された.本反応系では,従来の約1/10の触媒量により,従来の約10倍の分子量をもつポリマーが定量的に得られた.
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