研究課題/領域番号 |
23350043
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
林 昌彦 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60192704)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 不斉合成 / 光学活性触媒 |
研究概要 |
一般に、鎖状化合物は炭素―炭素単結合が自由に回転するため、化合物中の立体中心が反応点に対して影響を及ぼしにくく、立体制御が難しい。一方、環状化合物は炭素―炭素単結合の回転が抑制されているため、立体誘起を導くのに有利と考えられる。そこで、環状化合物の立体を制御し、その後、開環することにより、立体制御された鎖状化合物の合成を目指した。具体的に、私はエポキシドをもつシクロヘキセンに不斉アリル位酸化を用い、その後、エポキシドの開環により立体制御された環状化合物を合成した。続いて、オレフィンをオゾン酸化で切断することにより立体制御された鎖状化合物を合成した。 メソ化合物であるエポキシオレフィンに対し銅―キラル配位子触媒存在下、t-ブチル過安息香酸を用いて不斉アリル位酸化を行い、化学収率30%、不斉収率84% eeで酸化生成物を得た。次にこの得られた化合物をp-ニトロベンゾイル保護体に導くことで、結晶性に優れた化合物へと変換し、これを再結晶することによって光学純度99% ee以上で得た。さらに、得られたエポキシドを酸触媒を用いて開環することで三つの不斉点をもつ環状化合物を87%の収率で得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環状のエポキシアルケンに対して、不斉アリル位酸化反応を行うことにより、酸化生成物を84%eeで得た後、結晶性の高いp-ニトロベンゾエイトに誘導し、再結晶することにより、光学的に純粋な、エポキシアルコールを得ることに成功した。このエポキシドを水、あるいはアジドで開環することにより、3点の立体化学が制御されたシクロヘキセン誘導体を得た。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、残っている二重結合をオゾン酸化で切断することにより、環状化合物から鎖状化合物へと変換する。その結果として、従来困難であった鎖状化合物の3点を完全に立体制御したキラルビルディングブロックが合成できる。さらに、本手法を用いて天然物のオキシピリン累の不斉合成も行う予定である。
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