研究概要 |
本年度においてはラジカル種と遷移金属触媒とが相乗的に協同作用する系として、ヨウ化アルキル、一酸化炭素、アリールボロン酸の三成分カップリング反応に取り組み、その結果、アルキルアリールケトンの合成法の開発に成功した。この基本反応については複数の一酸化炭素を取り込むことの出来る環化型カスケード型反応への応用も検討したが、期待通りに反応は進行した。金属触媒のスクリーニングの結果としてはパラジウム種が良く、また光照射を併用することで、効率的な触媒系の構築が可能となることが明らかとなった。また反応機構の検討も行なった結果からは、アシルラジカル種の介在を経て最終鍵活性種となるアシルパラジウム種へと至る経路に合理性があることが示された。また光照射を用いるポリオキソタングステートによる光C-H活性化反応においてはシクロペンタノンをモデルにβ位での位置選択的なC-H結合の形成にはじめて成功した。これをカルボニル化条件で実施し、β―アシル化反応の開発にも成功した。たとえばシクロペンタノンとメチルビニルケトンを触媒量のテトラブチルアンモニウムを対カチオンとするポリオキソタングステートの存在化に一酸化炭素を加圧し、光照射を行なうと、1,4,7-トリケトンが合成できた。またβ位での選択性の発現はラジカル極性効果に基づくものであることを考察した。また一酸化炭素とケイ素置換のアリル型有機リチウムの反応を、マイクロリアクターを用いる加圧フロー系で実施し、その迅速化および高効率化に成功した。さらに、アニオン種の反応、つづく一酸化炭素の反応、そしてトリメチルクロロシランによるクエンチという一連の実験をすべて、連続フロー系で実施することにも成功した。これらの成果はいずれも現代のカルボニル化反応の研究の進展に資するものとなり、影響力がある成果といえる。
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