研究概要 |
電荷中心が嵩高く疎水的な置換基で覆われた親媒質性電解質は極性の低い環境下においてもイオン対が解離し、同符号のイオン間静電反発が利用できるため、新しい機能性材料への展開が注目されている。今年度はまず、親媒質性電解質をもつ高分子ブラシの合成に挑戦した。重合開始剤を固定化したシリコン基板から親媒質性電解質を有するアクリレートモノマーとオクタデシルアクリレートを表面開始原子移動ラジカル重合法により親媒質性電解質をもつ高分子ブラシを作製した。イオン対が解離可能なTHF、1,2-ジクロロエタン、および解離しないトルエンでは、媒質の誘電率が高くなりイオン対の解離度が上昇するに従い、乾燥状態でのひだ状構造が長くなることが観察された。この変化はイオン対が含まれない高分子ブラシでは見られなかったことから、高分子鎖中に含まれる親媒質性電解質が溶液中で解離することによるイオン間に働く強い静電反発により高分子鎖が伸長したためであり、低極性媒質中で機能する高分子電解質ブラシの作製に成功した。次に親媒質性電解質を疎水部とし、親水性が高く非イオン性の親水性部位を結合することで、イオン対を疎水部とする逆両親媒性分子の分子デザインについて検討した。具体的には、テトラアリールホスホニウム誘導体を開始剤として2-メチル-2-オキサゾリンを重合し、非イオン性の親水性ポリマーであるポリオキサゾリンを親水部とする両親媒性分子を合成した。また親媒質性電解質に糖を親水部として導入した。これらの水や疎水性の高い溶媒中での分子会合挙動を検討したところ、ベシクルやミセルが形成されることが明らかになった。これはイオン対を疎水部とする全く新しい”逆両親媒性分子”である。さらに難容性物質として、疎水性の高いアミノ酸残基からなるオリゴペプチドへの親媒質性電解質の導入を検討した。
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